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露出の要素分解 ~背景露出と被写体露出~

今回は「背景露出と被写体露出」のお話です。

先に言っておきますが、この「背景露出」、「被写体露出」というのは私の造語です。ググってませんので実際どうか知りませんが、当サイトでは「私の造語なので、他の人に聞いても誰も知らない可能性があるよ!」という認識で読んでください。

それで、これは何の話かというと、ワークショップの受講生、卒業生、いずれからも「ミックス光」、もしくは「多投発光」でのライティングの質問を少なからず受けまして、その点踏まえて最近のワークショップではその解説しているのですがやはり皆さんの課題として根深いと思いましたので解説しておこうと思います。

ちなみに以前、ここでもちょっと触れてます;

ワークショップの告知と小ネタ

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まず、ミックス光、多投発光の際に、皆さんが陥る間違いが一つあり;

一発で決めようとする

ことです。↑のような写真になって「???」となる方が少なくないです。

正直なところ一発で決まることなんてありませんw(ここで私は一発で決めるけどなー、みたいに書いてしまうと格好良いんですけどね、実はそうでもないです(後述))

それでまず、考え方としてそれぞれの「面」を要素分解して露出を決めることから始めます。

結論から先に言うと、こういうイメージです;

写真というのは平面(2D)ですが、実際にその写真の中に写るものは立体(3D)であり、それらをひとつずつの「面」として要素分解して考えるわけです。この「面で考える」という概念はピントと同じで過去に説明しています。

参考:ピントは「点」ではなく「面」で考える。

ここまでいいですかね?

それで比較的簡単にやる方法としては「背景露出」から決める方法です。まず最初に基準(スタート地点)となる一枚をテスト撮影します。このスタート地点の露出は任意で構いません。

●F8.0、ISO200、1/125

この例では外光とのミックス光です。まだ窓の外が暗いです。それでシャッタースピードで環境光をコントロールするのでシャッタースピードを一段遅くします。

●F8.0、ISO200、1/60

最初の作例よりも明るくなりましたが、まだちょっと暗い。そこでさらに一段遅くします。

●F8.0、ISO200、1/30

ひとまず、こんな感じでしょうか。これで背景の露出が決まりました。次に被写体の露出を決めるのですが、ここでストロボを発光させてテストします。

この前の作例に、外光の明るさはそのままにストロボ光が加わっただけです。

この場合、ストロボ光が強すぎて影がはっきり出てしまっていますし、不自然な光です。ここでストロボの光量を変えます(フラッシュエクスポージャー)。カメラ側の設定は変える必要ありません。

さて、ストロボ光を二段落とします。

前の作例よりも光量を落とし、ほどよい光量で被写体に当てています。この前の作例よりも光量を下げているので光の不自然さが無くなりました。

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今回の作例はいささか微妙な気がしますが、あくまで「考え方」としてはこういうことです。また、一番最初に「私でも一発で決まらない」と書きましたが、実際のところ一発で決まることが無いわけではありませんが、それでも数回テスト撮影してから本番撮影します。ただ、一点皆さんと違うとするならば意思決定のスピードでしょうか。これは慣れだと思いますが、せいぜい2、3秒です。そうは言っても、この図(↓)が頭の中をぐるぐるする早さが早いだけです。

ワークショップでも言い続けてますが、この原則から外れることなんて無いんです。

(まとめ)

・多投発光、ミックス光のときは「背景」と「被写体」それぞれの露出を考える。

・一発で決めるのでは無く、要素分解して考える。

・撮影意図、撮影イメージを明確にする。

こんなところでしょうか。

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ワークショップに関して数名からお問い合わせを頂いていますが、3月はしません。4月はやる予定でいますがまだ日程は未定です。決まり次第告知しますのでお待ちください<(_ _)>




開放で撮ってみる。

さて、久しぶりの更新ですが、今回はライティングの話からちょっと逸れて、「開放撮影」のテクニックです。

「開放撮影」というのはいわゆる「長時間露光」というやつでシャッタースピードを遅くし、シャッターを開放で撮影するという伝統的な撮影テクニックです。

レンズを絞り込む、もしくは減光フィルターを使うわけですが、考え方としては「露出トライアングル」と同じです。

一般的には夜景や暗いところでの撮影に使われるテクニックですし、実際にやったことがある方も多いと思います。ただ、そこを一歩踏み込んで使うと動く被写体を「消す」もしくは「流れるように」撮れるんです。

これはこれで知っておくと撮影意図の幅が広がるという訳です。

ただ、一つ面倒なのは時間帯や周囲の明るさ、動く被写体によってかなり制限を受けてしまうという点です。

実際のところ今回のサンプルは分かりやすいようにと思って早朝(5:30am頃)渋谷の交差点で撮ったのですが想像以上に人が多くて人影を完全に消せませんでした(T_T)ただ、そうは言いつつも「消えそうな雰囲気」は伝わるかと思います。

それでは説明します。まずは、普通に撮影するとこういう感じ;

早朝の渋谷駅前の交差点ですが、けっこう人がいますね。皆さん信号を渡る気満々です。そこで人が信号を渡り始めた時に撮影したのがこちら。

人が消えている(もしくは「消えそう」)ように見えません?か?

見た感じ「惜しい!」と言った感じもしますが、長時間露光するとこういうことができる訳です。

ただ、ちょっとおかしなのは絞りが「45」ということです。前述しましたが、露光時間を延ばすのは「被写体の動き」に依存するので露光時間が延びればそれだけ光の量が増えてしまいます。

ここはわかりますよね?

それでこの長時間露光の際に、光の量を減らすには減光フィルターを使うか、レンズの絞りを絞るしか無いのです。

ただ、一般的なレンズは絞りはせいぜい「F22」くらいまでです。それでは私は何のレンズを使ったか?

正解は「マクロレンズ」です。

ここで「マクロレンズ?」と思った方もいるかと思いますが、接写ができるというだけで、別にスナップ撮影にも使えます。また、今回使ったのはシグマの50mmマクロレンズですがこれは絞りがF45まで使えます。これだと被写界深度が犠牲になりますが、わざわざ減光フィルターを買う必要はありません。以前もマクロレンズを使った例を紹介しましたが、マクロレンズだからと言って接写にしか使えないという訳ではありません。こうしたトリッキーな撮影をするときはむしろ絞りがF45まで使えるというのは便利です。

と、いうことで開放で撮影するというのは知っていて損の無いテクニックですし、数回練習するとコツが掴めると思います。

ではまた。

(ワークショップの告知)

今月開催予定のワークショップですが募集中です。

今回も当事務所規定の人数が集まらなければ開催を見送ります。20日(火)頃に締め切るつもりですのでご希望の方はお早めに。

こちらもよろしくお願いします。




「スタート地点」を決める。~マニュアル撮影の設定~

さて、今回は「マニュアル設定での撮り方」の話です。

前回のワークショップで話したら意外とリアクションが良く、「ああ、そういうことか。」と納得しました。

それはどういうことかと言いますと、要するにやれ露出計だの、ライティングだの言ったところで「マニュアル撮影とはどういうことか」を理解していないとなにも始まらないということです。

時折、「露出計は持っているのだけどストロボをマニュアルでどう設定して使うか分からない。」と聞かれるんですね。ただ、私もこう聞かれると「???」となるのですがその疑問がやっと解けました。

いいですか、まずは「スタート地点を決める」ことが重要です。

この「スタート地点」というのは何かというと「カメラの設定」のことです。最初からカメラの設定を決めるんですよ、マニュアル撮影は。

※ここで言っているのは「私の方法」であって他のカメラマンさんたちがどうやっているかなんて知りません。

撮影意図にも寄りますが、そんな面倒なことはさておき、ライティングするときに自分が一番好きな設定を最初からしてしまうのです。細かい話はさておき、私の場合どういう設定をしているかと言いますと;

・F値:5.6、もしくは8

・シャッタースピード:1/100

・ISO:200

・ストロボ:1/4(GN58のストロボを使用)

です。

それで、この設定で試し撮りしてあとは随時撮影意図に従ってそれぞれの設定を変えます。それだけのことです。設定を変えると言っても、露出トライアングルフラッシュエクスポージャー、これらの概念に基づいて変えているだけなので難しくないですよね?(たぶん)

デジタルなのでカメラの液晶モニタで撮影結果を確認しながら撮るのでこういうスタイルなわけですが、正直私はフィルムで撮影の仕事したことないのでフィルムの時がどうなのかなんて知りません(知ろうとも思ってません♪)。

ただし、これは持っているカメラやレンズなどで変わるのと、この「スタート地点」というのはあくまで「好み」の問題です。

そこで私が使っている機材を紹介すると;

カメラ:Canon5D MkⅡ

レンズ:Canon 標準ズームレンズ EF24-105mm F4L IS USM

レンズとカメラはこんな感じです。基本的にレンズはほぼこの一本です。

そこでなぜカメラの設定が前述のようになったかと言いますと;

・F値:5.6、もしくは8

これはレンズが解放F4なので「一段か二段下げる余地」を残したいからです。解放のまま撮影すると撮影中に設定変えるときに時間を要するのと、被写界深度を深めにして、シャープさを優先しているからです。ちなみにレンズの明るさに拘る人がけっこういらっしゃると思いますが、ストロボを使った撮影ではさほど開放値の小さなレンズ(明るいレンズ)ってのは必要ないようにも思います(これまた好みの問題ですが。ただ、「明るいレンズじゃなきゃダメ」ということは無いです。)。

・シャッタースピード:1/100

レンズの焦点距離が最長で105mmなので1/100で撮ればまー手ぶれのリスクは回避できます。一応、手ぶれ補正のあるレンズですが、教科書通り「1/焦点距離」というところでしょうか。あとはズームレンズなのでいろいろと画角変えたり、動きながら撮るので最もリスクのないシャッタースピードとでも言いますか、まぁ、そんな感じです。

・ISO:200

これまた絞り同様「下げる余地」を残したいからです。5DMkⅡのISOは最小で100なんです。なのでとりあえず200にしている感じです。正直400でも良いかな?、と思うことはありますし、その辺は撮影状況で変えてます。ISO200で撮れば多少暗ければ400や800使えますし、明るければ100にして一段落とせばいいのでね。

最後にストロボに関して言えば1/4というのはリサイクルタイムも短く、「あと二段上げられる」という余裕と、「1/128」まで落とせるならあと5段分下げることができます。正直なところ1/4だと明るすぎる場合もあるので1/8とかも多用し、暗ければ逆にISOを上げることでリサイクルタイムの短縮やバッテリーの寿命を保つ場合もあります。これまた撮影状況に寄ります。

さて、ここでお気づきの方もいると思いますが、私の設定というのは「常に上下に変える余地がある」という点です。バスケットボールで言うところの「ピボット」のイメージです。なんと言いますか、軸を決めて常に動けるようにしておくと言った感じです。

どうですかね?こんな感じの説明で。

実際の撮影では前述の設定で、「テスト撮影→各種パラメーター調整→テスト撮影」を数回繰り返し「本撮影」という流れです。このとき頭の中は「絞り、シャッタースピード、ISO感度、ストロボの光量」の4つのパラメーターがグルグルします。

本当に「グルグルする」んです。それで私の場合はこの「グルグル」を数秒でやるのです。ちなみにこれは練習を積むことで誰でもできるようになります。そしてこれができるようになって初めて「露出計」が意味を持つのです。

 (まとめ)

・スタート地点(カメラの設定)をまず決める。

・設定変更は露出トライアングルフラッシュエクスポージャーの原理原則に基づいており、特別なことは何もしていない。

・ひたすら練習することで身に付く技術です。

こんなところでしょうか。プロだから何か違うことしてるんじゃないのか?と変な期待をされている方も少なくないように思いますが実のところ基本に忠実に、それぞれの設定値の意味をきちんと理解すること、これだけです。

いずれにせよ一度試してみてください。

●第7回ワークショップのご案内

次回は8月24日(土)の開催です。(まだ募集中です)

※すでにお申し込み頂いておりますが、当事務所規定の人数が集まらない場合中止の可能性があります。

※8/20(火)を締切とさせて頂きます。

※年内は毎月開催予定ですが、年明け以降のスケジュールは未定です。

 




「適正露出」なんて無い。

今回は「適正露出」の話です。

それでなぜ、こんな話をするかと言いますと、「露出計の説明をして欲しい」という要望が少なからずあります。要するに「露出計で計測した露出が『適正露出』だから『正解』なんでしょ?」ということだと思うのですが、これは間違いです

たびたび書いておりますが、「撮影意図」が最優先であって「露出」というのは後回しです

※念のために書きますが、「露出計」を使うことが「正解」ではありませんからね。露出計はあくまで「計測器」であって「正解を示してくれる機械」ではありません。電卓と同じで使い方を間違ったり、そもそも計算が間違っていたら全く意味がありません。ここを誤解している人たちが本当に多いです。

また、「適正露出」という言葉の使い方がおかしいと言いますか、何というか・・・・。英語では「Perfect Exposure」と言ったりしますが、ニュアンスとしては「そうそうこれこれ!」みたいな使われ方だと思います。

要するに「適正露出」にも「Perfect Exposure」にもこれと言って客観的な指標があるわけではない、ということです。

さて、ここで「おいおい、何を言っているんだお前は!」という方に質問です。

次の三つの写真で「適正露出」はどれですか?

●A:F4.0、1/125、ISO200

●B:F4.0、1/60、ISO200

●C:F4.0、1/30、ISO200

さて、どうでしょうか?どれが「適正露出」ですか?

それぞれの露出を解説すると;

●A:中央部重点測光で自動的に決められた露出(←おそらく「正解」を欲しがる人たちの一般的な「適正露出」と思っている露出)。

●B:Aの露出を露出補正で+1段。

●C:Bの露出を露出補正で+1段(Aの露出の+2段)。

です。

おそらくあなたが選んだのは「適正露出」ではなく「好きな露出(というか「写真」)」だと思います。

違いますか?ね?

なので「適正露出」というよりは、「どれが一番好きですか?」が正しい聞き方で、「適正露出」という言葉の意味とは違います。複数の人にこの三種類の写真を見せ、投票してもらうとバラバラの結果になると思います(※ワークショップで実験済み)。ある程度偏る結果になると思いますが、「全員一致」はしません。

これが「適正露出なんて無い」と言っている理由です。

そうは言いつつさらに、皆さんからの回答を集計してみたいと思います。

Q.「適正露出はどれですか?」(←クリックするとアンケート画面に移動します)

(※統計的に信頼足る母数が集まれば後日紹介しますので是非ご協力お願いします♪&自由にコメントを書ける欄もご用意しましたw)

要するに(何度も書いていますが)自分がどういう撮影イメージで撮るかの方がはるかに重要です。

それで測光方式にもよりますが、あくまで「目安」であって欲しい撮影イメージとは違うことが多々あるということです。

(まとめ)

・「適正露出」は幻想であり、露出に「正解」はない。

・正解があるとすればそれは「撮影意図」に依存する。

・その写真を使う人が納得する露出が正しい露出。プロならば「お客が納得」すれば良いのです

また、ときおり知ったかぶりの人が「ハイキーだからダメ」とか「ローキーだからダメ」などとほざくアホ人がいますが、ハイキーがダメ、ローキーがダメ、なーんてことは一切ありません。そもそも写真に「ダメ」なんて無いんです。同様にヒストグラムを見て善し悪し判断するアホ人もいますがこれなんて愚の骨頂です。

そこにあるのは「好きか嫌いか」、「アリかナシか」だけです。

極端な話が写真の善し悪しなんてものは、その人の好みです。

こうした話を前提にいずれ「露出計」の解説をする予定です。

(※口頭だと5分で説明できるんだけど、文章で説明するのほんと難しいんですよ・・・、しょせん「計測器」なのに・・・(T_T))




盲点?露出と光質 ~後編~




盲点?露出と光質 ~前編~




意外と重要な「月の撮り方」




ストロボ撮影のための「シャッタースピード」

(F5.6、ISO100、1/8000