みんなの嫌いな「段」の話

マニュアルで露出を決めるとき、上級者の人が「一段絞って」とか「一段開けて」とか言うのを聞いたことがあると思います。それで残念なことにここでマニュアル撮影を挫折する人たちが多数だと思います。

みんな「段」が嫌いなんです(笑)

面倒な概念であることは確かですが、そんなことを言っていても仕方ないのでまずは「ザックリ理解する」というのが今回の主旨です。

さて、露出を決めるときに必要な設定項目は、絞り(F値)、シャッタースピード、ISO感度の三つが基本ですが、「段」という概念はそれぞれにあります。

それでそもそも「段」とは何かというと;

「EV値の変化量」で写真業界の慣例でそれを「段」と呼んでいるだけです。

さらに、wikipediaにその辺の解説が詳しいのでそちらに解説を譲りますが、それでも「???」となると思います。

言ってしまえば「段」というのはカメラに取り込む光の量を調整するのに使うパラメーター、ただそれだけです。

正直言ってしまうと厳密にEV値の原理(F1.0、シャッタースピードが1秒をEV0という概念)を理解しておいて損はありませんが、私の経験則では得もしない。なにかそういう資格試験があるなら必要ですが、無理に覚えたところで意味はないし、いずれ経験を積めばそんなことを考えず直感的に操作できるようになります。

それよりも露出の決定要素は「F値」、「シャッタースピード」、「ISO感度」の3つで、それぞれの役割を理解するほうが重要です。

(※露出の決定要素は先述した「F値、ISO、シャッタースピード」が3つが基本ですが、ここにストロボの光量調整(いわゆるフラッシュエクスポージャー(Flash Exposure))の4つで決める場合もあります。ただ、この説明は複雑なので改めます。)

それで「段」の考え方を簡易的な例で説明します。まず;

(例1) F2.8、1/125、ISO200

(例2) F4.0、1/125、ISO400

(例3) F5.6、1/60、ISO400

(例4) F8.0、1/60、ISO800

この4つの露出は全部「同じ」です。(例1)を基準(スタート地点)に他の例2~例4までそれぞれF値やシャッタースピード、ISO感度の「段」を変えています。

そこで前述したEV値を計算して説明する方法もあるのですが、そんな面倒なことせずシンプルに説明すると、まず(例1)の設定を基準とし、設定値をそれぞれ「0」に置き換えます;

(例1) (F2.8=0)+(1/125=0)+(ISO200=0)=0

どうでしょうか?いいですか?

あくまで任意で基準(スタート地点)を決めているのであって、厳密にこの数値じゃなければならない、ということではありません。ただ、このスタート地点となるそれぞれの設定を「0」に置き換えただけです。

それでこの基準となる設定の各項目を一段絞る(光の量を減らす)場合「-1」、一段上げる(光の量を増やす)場合を「1」とします。

これを(例2)の各設定値に置き換えるとこうなります;

(例2) -1010

F値(絞り)を一段絞り、シャッタースピードは変えず、F値を一段絞った分、ISO感度を一段上げている、ということです。その結果;

(例2) F4.0(-1)、1/125(0)、ISO400(1)

となります。どうでしょうか?さらに他の例も同様に置き換えると;

(例3) -2110

(例4) -3120

となります。どれも(例1)と同じ(合計が「0」)になります。

こうしてみると「段」の数値が見慣れない数値の羅列なので戸惑ってしまいますが、「見慣れない数字の羅列」に惑わされているだけ、ということが分かるかと思います。

他のサイトでいろいろと小難しく解説しているのを見かけますが、シンプルに考えてしまうことです。

(まとめ)

ここで理解しておきたいことは;

・「段」と言ってもシャッタースピード、絞り、ISO感度のそれぞれにある。

・露出はこの3つの組み合わせで決まる。そして3つの組み合わせは「撮影意図」によってそれぞれ変わる。

・カメラのオートモードというのはこの3つの設定を自動的に行っているだけで、この3つのパラーメーターの組み合わせでしかない。

・パラーメーターとなる「数値」に馴染みがないだけでそんなに難しく考えるようなものではない。

ってことです。

とにかくさほど難しく考えないようにすることが重要。

(おまけ)

それじゃあ私はそんなのすべての数値を覚えているかと言われれば覚えてなんていません(笑)日常的に使うレンジの数値をは覚えていますが、こうして原稿書いたりしていると「あれ?・・・思い出せない」ということが多いです。それで自分のスマートフォンのメモ帳にそうした一覧を入れています。

こうしておけばいつでも確認できるので便利です。

(付録:「段」早見表)

●シャッター速度 1段刻み
1/8000、1/4000、1/2000、1/1000、1/500、1/250、1/125、1/60、1/30、1/15、1/8、1/4、0.5、1、2、4、8、15、30、・・・

●シャッター速度 1/3段刻み
1/8000、1/6400、1/5000、1/4000、1/3200、1/2500、1/2000、1/1600、1/1250、1/1000、1 /800、1/640、1/500、1/400、1/320、1/250、1/200、1/160、1/125、1/100、1/80、1/60、1 /50、1/40、1/30、1/25、1/20、1/15、1/13、1/10、1/8、1/6、1/5、1/4、0.3、0.4、0.5、0.6、 0.8、1、1.3、1.6、2、2.5、3.2、4、5、6、8、10、13、15、20、25、30、・・・

●絞り 1段刻み
1.0、1.4、2.0、2.8、4.0、5.6、8.0、11、16、22、32、・・・

●絞り 1/3段刻み
1.0、1.1、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.5、2.8、3.2、3.5、4.0、4.5、5.0、5.6、6.3、7.1、8.0、9.0、10、11、13、14、16、18、20、22、25、29、32、・・・

●ISO感度 1段刻み

100、200、400、800、1600、3200、6400

●ISO感度 1/3刻み

100、125、160、200、250、320、400、500、640、800、1000、1250、1600、2000、2500、3200、4000、5000、6400

※昨今のカメラだと「1/2段ずつ」か「1/3段ずつ」か選べますが、これは自分が使いやすいほうを使用すればいいのですが、ストロボの光量調整が「1/3段」の場合が多いので私は「1/3段」を使用しています。

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