夏前にマスターしたい「ハイスピードシンクロ」 ~後編~
さて、前回はハイスピードシンクロについての定義や用語の整理をしました。
そこで今回は実際に何がどう変わるのかの説明をします。ただ、今回の説明は「ハイスピードシンクロ」を使った解説ですが、「ハイスピードシンクロの機能を除けば」、いつも言っている4つのパラメーターの原理原則に沿っています。
参考:
皆さんの中にいままでの解説が「点のまま」の方もいるかと思いますが、これを機に「線」にしてしまいましょう。
まずはスタート地点から;
●ストロボ発光無しの状態
まずここをスタート地点としていろいろシャッタースピードによる変化を見ていきます。そこで今回はメーカー純正のストロボとTTLケーブルを使いました。
さて、ストロボの光量は1/4、そしてハイスピードシンクロに設定します。
ではシャッタースピードを一段ずつ上げて発光させて見ます。
●F5.6 1/60 ISO200
特別な感じはしないというか、「ああ、そうですか」みたいな感じでしょうか。
それで、ここで見るべきポイントは何かというと「窓の外」すなわち環境光の変化です。ハイスピードシンクロの機能は「被写界深度を変えずに環境光をコントロールする」ことですからね。
そして次;
●F5.6 1/125 ISO200
●F5.6 1/250 ISO200
本来であればこれくらいのシャッタースピードで黒い帯が入りますが入ってません。さらにもう一段シャッタースピードを上げます。
●F5.6 1/500 ISO200
さて、窓の外が暗くなっているのが分かりますが、ついでにストロボの光量自体も減っているのが分かると思います。
シャッタースピードで環境光をコントロールする、というのが鉄則ですが、実際のところストロボの光量にも影響するということが分かるかと思います。そして続いてシャッタースピードだけ変化させ、どうなるか、ハイスピードシンクロの限界である1/8000まで順に見ていきます。
●F5.6 1/1000 ISO200
●F5.6 1/2000 ISO200
地味な感じが続きます・・・・w
●F5.6 1/4000 ISO200
●F5.6 1/8000 ISO200
ひとまずハイスピードシンクロの限界の1/8000まで試してみましたが、真っ暗です。
また、ここまで見て、すでにハイスピードシンクロの同期速度についてはどうでもよくなっている(?)気がしなくもないですが、要するに;
・シャッタースピードで環境光をコントロールする。
・シャッタースピードでストロボ光に影響がある。
ということです。それでなぜシャッタースピードで環境光をコントロールする(という定義になる)かというと、通常のストロボで同期するシャッター速度は限定的(1/160~1/200程度)だからであって、実際には絞り(ストロボ光をコントロール)で環境光をコントロールする場合もあります(※黒バック潰しは絞りで環境光をコントロールします)。というのもそれぞれが独立した機能ではなく、相互に影響し合って露出は決まるからです。
では、1/8000の真っ暗な写真のISO感度を6400(5段アップ)まで上げるとどうなるか?
●F5.6 1/8000 ISO6400
露出で言うと1/250の例と同じになります。
今回はハイスピードシンクロの解説でしたが、あくまで「クリップオンストロボの機能の話」であって、その原理は今までも書いてきた原理原則から逸脱するようなことは無いんです。
これでハイスピードシンクロ、日中シンクロの理屈はおわかり頂けたかと思います。
(まとめ)
・被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影するための機能がハイスピードシンクロ。
・「ハイスピードシンクロ」はあくまでクリップオンストロボの機能の話。スタジオ用ストロボには無い機能。
ちなみに「被写界深度を変えずに」というのは一定の焦点距離での話です。焦点距離を変えることで被写界深度が変えることができるのは過去に説明しています。
参考:
言ってしまうとハイスピードシンクロはトリッキーな機能とも言えるわけです。そうは言いつつ、これから夏に向けて覚えておくと面白い表現ができると思います。
ただ、一つ気をつけるのは真夏のカンカン照りの日にストロボ発光させて写真撮っていると変な人だと思われますがねw
ではまた。
(以下、余談)
・その1
今月開催予定のワークショップですがお申し込みがイマイチですw今月の開催は無理っぽいのでそろそろ来月の開催スケジュールを考えることにします。
・その2
ワークショップの参加者や、時折頂く質問で、みなさんがよくつまづいているポイントに「背景」の考えがスッポリ抜けているんですね。私は「背景露出」と呼んでいますが(※「背景露出」というのは私の造語なのでそんな専門用語ありません。)、背景と被写体の相関性を考えないとライティング知識をどんなに詰め込んでも知識が「線」になりづらいように思います。特に今回説明した日中シンクロは被写体と背景の露出差を考えないと上手く行かないんです。
これは特に難しいことではなく、4つのパラメーターを常に意識すること、そして、最終的に露出は「面で決まる」ということです。この辺については改めて説明しなきゃならんなー、と思っていますが、これが活字で説明するにはどうしたら良いか、悩みどころではあります。
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