夏前にマスターしたい「ハイスピードシンクロ」 ~前編~
さて、久しぶりですが今回は「ハイスピードシンクロ」のお話です。
この言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、誤解されている方も多い部分ですので解説します。
よくある誤解としては「シャッタースピードを上げてストロボ発光して撮影する方法」という誤解です。これに関しては「ハイスピードシンクロ」という名称に問題があるとも言えます。
そこでなぜ「誤解」かと言いますと、普通のストロボでシャッタースピードを上げて撮るとどうなるか?こうなります;
シャッタースピードを1/320にしてかなり極端に撮ってますがこういう影が入ります。おそらく、前述した「シャッタースピード上げて撮る」という認識の方は実際に撮影してこうしたシャッターの影が入るのを目の当たりにして「???」となった経験をお持ちの方もいるかと思います。普通のストロボでこうした幕が写り込まないのは1/160~1/200程度じゃないかと思います(経験則)。ただ、この同期速度はストロボの機種で多少異なるようです。
それで、ひとまずハイスピードシンクロの定義とは何か、キャノンのウェブサイトで記載されていた説明を転用すると;
通常ストロボ撮影では、先幕が走り終わり、後幕が走り始める前にストロボが閃光発光します。ハイスピードシンクロは、先幕と後幕がスリットを形成して走る高速シャッタースピードでも、長時間ストロボを発光し続けることで同調させるものです。EOS専用スピードライトのEXシリーズストロボはこの発光方式も搭載。しかもE-TTLIIですからハイスピードシンクロ撮影もオートで可能としています。
(出所:Canon FlashWork)
ということです。先幕、とか後幕という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは「フォーカルプレーンシャッター(←wikipediaのページに移動します)」というシャッター方式の一つです。また、ハイスピードシンクロの説明で「FPシンクロ」という言葉が出てくることがありますが、これは「フォーカルプレーン(=FP)」の略です。すなわち;
ハイスピードシンクロ=FPシンクロ
ということです。それでこの原理を簡単に図(?)にするとこういうことです。
・通常のストロボ撮影 :(先幕)------(発光)(後幕) ←発光回数一回
・ハイスピードシンクロ :(先幕)(発光)(発光)(発光)(後幕) ←連続発光
ハイスピードシンクロさせるときはストロボが連続発光していることになります(通常は一回)。むろん、連続発光させるのでバッテリーの消耗が早いです。また、このハイスピードシンクロというのは「クリップオンストロボに搭載されている数ある機能の中の一つ」ということです。スタジオ用の大型ストロボやモノブロックストロボにはこのような機能はありません。
なぜ、スタジオ用ストロボにはこの機能が無いか?
無くても困らない機能だからです。(ストロボメーカーさんを敵に回したい訳ではありません<(_ _)>)
では、なぜ無くても困らないかと言いますと、これまた聞いたことがあると思いますが「日中シンクロ」というテクニックがあるからです。ただ、この日中シンクロという呼称も誤解を招きやすいと言いますか、「日中ライティング」とか「日中ストロボ」のほうがしっくりきそうに思います。
ようするに日中、屋外(環境光の強い撮影環境)で背景と被写体の露出を近づける(もしくは差を付ける)ためにストロボ発光するのですが、このテクニックの考え方はハイスピードシンクロと同じだからです。ちなみにですが、日中シンクロの例として;
●ストロボ無し
●ストロボ有り
この二つの写真の後者の「ストロボ有り」がいわゆる日中シンクロで撮影した写真ということになります(※ほんとはもっとわかりやすい写真を用意したかったのですが、手元にあって使えるのがこれだけでしたので雰囲気だけ掴んでください<(_ _)>)。
それではハイスピードシンクロという機能はなんのためにあるかと言いますと;
「被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影すること」(長っ!)
です。こうすることによって被写体と環境光の露出バランスを変化させることでドラマチックな写真が撮れるということです。ただし、「被写界深度を変えない」ということであれば、レンズに減光フィルターを付けて撮影しても同じ結果になります。なのでスタジオ用ストロボにはこの機能が無いのです。
まとめると;
「ハイスピードシンクロ=FPシンクロ≒日中シンクロ」
ということです。最後の日中シンクロは実現するストロボ側の機能としてほかの二つと違いますが、やろうとしているライティング技術の「原理は同じ」です。
また、今回タイトルに「夏前にマスターしたい」となぜ付けているかというと、日中シンクロって夏の日差しの強い時につかうと色味の締まった、かなりクールな表現ができるからなんです。このテクニックを使った広告写真はけっこうあります。だからこそ、この理屈を理解し、夏に備えておきたい、という訳です。
(まとめ)
ひとまず今回のポイントをまとめると。
・被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影すること。
・無くても困らない機能である。
・通常のシャッタースピードで同期できるのは1/160~1/200程度
ハイスピードシンクロに関して言えばこんな感じです。おそらく皆さんお持ちのメーカー純正の上位機種のクリップオンストロボにはハイスピードシンクロ機能があるわけで、せっかくクリップオンストロボを使うなら「使えるテクニック」として覚えておいて損はありません。(※クリップオンストロボを「スピードライト」というのはハイスピードシンクロできるからでもありますし。)
また、過去にシャッタースピードについての記事もありますのでそちらを再読しておくと次回の説明がわかりやすいと思います。
それでなぜ数回にわけて説明するかというと、ハイスピードシンクロを軸に、絞り、シャッタースピード、ISO感度、フラッシュエクスポージャーの4つのパラメーターの組み合わせ、という原理原則を再度確認していただきたいからです。この原理原則から逸脱することはありえませんので。
ひとまず。
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蛇足ですが、今月のワークショップのお申し込みがありません(T_T)
来るときは断るほどなのに、来ないときは全く来ない、という奇妙な感じではありますw来月も一応予定はしていますが、次回はおそらくゴールデンウィーク直前くらいのタイミングになりそうです(※来月から消費税を外税にします)。
それではワークショップもよろしくお願いいたします<(_ _)>
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