Category Archives: 撮影テクニック

ライティングの写り込み考察

今回は「ライティングの写り込み」について考えてみます。「考えてみます」と言うのはそこに正解は無いからなんですが、時折「光沢物にライティングの写り込みを無くす方法」を聞かれます。ただ、実際には「無くす」と言うのは物理的に無理な場合も多いのでいつでも写り込みを無くせる訳ではないということです(私の知る限り)。

そこで今回は逆にライティングを「写り込ませる」というコロンブスの卵の発想で撮影した例を紹介します。

被写体は光沢ありつつ透明といういささか難易度高めのシャンプーのボトルです。

●基本パターン

私の場合ですが、まず最初にポップアップタイプのソフトボックスを真上から当てるライティングを試します。

これで撮るとどうなるかというとこうなります。

ソフトボックスがガッツリ写り込んでます。また、下の方は台の「白」が写り込んでいるのですが被写体が歪曲しつつ光沢があるので写り込み方があまり綺麗じゃないです。また、よーく見るとソフトボックスの写り込みの横にスタジオの蛍光灯がうっすら見えます。結論から言いますと、イマイチ。

●基本パターン+白バック飛ばし

そこで次はここに「白バック飛ばし」を入れます。これは以前紹介した「透明な物を白バック飛ばしで撮る。」の応用です。今回の被写体は透過物ですが透明ではありません。それで白バック飛ばしのライティングを足すと;

 

ちょっとマシになりましたがただ、やはり上部のソフトボックスの写り込みが気になります。また、全体的に質感に乏しいと言いますか、高級感が無いです(あくまで私の主観)。

●被写体のエッジ部分を強調する。

今度は基本パターンを完全に捨てて、やり直します。そこで次はボトルの端の縦のラインを強調するライティングに変えます。とりあえず撮影結果をお見せしますと;

上部から当てていたソフトボックスの写り込みの代わりに、右側にライン状の写り込みを入れました。これはソフトボックスを上部からではなく「横」から当てたからです。

ちなみにソフトボックスを長方形のものに変えたのは被写体に合わせ(縦長)、写り込みを縦長に入れるためです。これだと最初に紹介した違和感のある写り込みではなく、被写体を強調した写り込みに変わります。

ただ、やはりスタジオ内の蛍光灯が若干写り込んでいて、これはダサイ。

●被写体のエッジ部分を強調する。+白バック飛ばし

そこでここにまた白バック飛ばしを入れます。

かなり「それっぽく」なりました。

●被写体のエッジ部分を強調する。+白バック飛ばし+レフ板

ひとまずここまで来ましたが、もうちょっとアクセントが欲しいと言いますか、なんか平坦な感じです。そこで今度はレフ板を入れて被写体の中央あたりに白い写り込みを入れてみることにします。

そうすると本日の最初の写真になるわけです。

と、こんな感じです。若干スタジオの蛍光灯残ってますが、今回のところはまぁ、良しとします。また、白バック飛ばしも入れているのでボトルの色味が浅くなっていますが、これは「透明な物を白バック飛ばしで撮る。」で紹介した被写体の裏側にテープ貼ったりすれば改善されると思います(今回未検証)。

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こうして見ると「写り込み」もやりようによっては被写体の演出に使えるということです。こういう「写り込み」のテクニックは自動車なんかでも頻繁に見かけます。

(まとめ)

・何を撮るにせよ「自分の基本パターン」を持つ。

・基本パターンで撮ってイメージと違う場合は発想を変えてみる。

・小さな違いでも撮影結果が大きく変わることは少なくない。

ちなみにですが、これってワークショップの一番最初にやる「入射角・反射角」の応用なんです。ワークショップ卒業生なら「ああ」と思って貰えているんじゃないかな?と思います。

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【ワークショップに関しての余談というか雑談】

先月からどうもワークショップのお申し込みが渋い。。。今回も平日ワークショップは希望者が未達のため開催を中止しました。アンケートではけっこう希望者多かったのですが曜日の選定間違ったかなぁ?と。金曜日開催とかがいいんでしょうかねぇ・・・?

また、通常のワークショップも今回はお申し込みが渋いです。

なのでぶっちゃけ値上げしようかなぁ、と思っています。

「人が来ないなら値下げでは?」と思われるかも知れませんが、「逆」です。

なぜならすでに参加した卒業生からのフィードバックを元に内容が毎回進化しているからです。基本的に卒業生(既存顧客=勇気を振り絞って参加した人たち)が受け取った価値が目減りするようなことはしません。なので「値上げ」です。

ただ、ぶっちゃけね、実のところ「開催中止」になると卒業生の皆さんが「安堵」しているんじゃないかな?とは思ってますよ(笑)

ではまた。




「スタート地点」を決める。~マニュアル撮影の設定~

さて、今回は「マニュアル設定での撮り方」の話です。

前回のワークショップで話したら意外とリアクションが良く、「ああ、そういうことか。」と納得しました。

それはどういうことかと言いますと、要するにやれ露出計だの、ライティングだの言ったところで「マニュアル撮影とはどういうことか」を理解していないとなにも始まらないということです。

時折、「露出計は持っているのだけどストロボをマニュアルでどう設定して使うか分からない。」と聞かれるんですね。ただ、私もこう聞かれると「???」となるのですがその疑問がやっと解けました。

いいですか、まずは「スタート地点を決める」ことが重要です。

この「スタート地点」というのは何かというと「カメラの設定」のことです。最初からカメラの設定を決めるんですよ、マニュアル撮影は。

※ここで言っているのは「私の方法」であって他のカメラマンさんたちがどうやっているかなんて知りません。

撮影意図にも寄りますが、そんな面倒なことはさておき、ライティングするときに自分が一番好きな設定を最初からしてしまうのです。細かい話はさておき、私の場合どういう設定をしているかと言いますと;

・F値:5.6、もしくは8

・シャッタースピード:1/100

・ISO:200

・ストロボ:1/4(GN58のストロボを使用)

です。

それで、この設定で試し撮りしてあとは随時撮影意図に従ってそれぞれの設定を変えます。それだけのことです。設定を変えると言っても、露出トライアングルフラッシュエクスポージャー、これらの概念に基づいて変えているだけなので難しくないですよね?(たぶん)

デジタルなのでカメラの液晶モニタで撮影結果を確認しながら撮るのでこういうスタイルなわけですが、正直私はフィルムで撮影の仕事したことないのでフィルムの時がどうなのかなんて知りません(知ろうとも思ってません♪)。

ただし、これは持っているカメラやレンズなどで変わるのと、この「スタート地点」というのはあくまで「好み」の問題です。

そこで私が使っている機材を紹介すると;

カメラ:Canon5D MkⅡ

レンズ:Canon 標準ズームレンズ EF24-105mm F4L IS USM

レンズとカメラはこんな感じです。基本的にレンズはほぼこの一本です。

そこでなぜカメラの設定が前述のようになったかと言いますと;

・F値:5.6、もしくは8

これはレンズが解放F4なので「一段か二段下げる余地」を残したいからです。解放のまま撮影すると撮影中に設定変えるときに時間を要するのと、被写界深度を深めにして、シャープさを優先しているからです。ちなみにレンズの明るさに拘る人がけっこういらっしゃると思いますが、ストロボを使った撮影ではさほど開放値の小さなレンズ(明るいレンズ)ってのは必要ないようにも思います(これまた好みの問題ですが。ただ、「明るいレンズじゃなきゃダメ」ということは無いです。)。

・シャッタースピード:1/100

レンズの焦点距離が最長で105mmなので1/100で撮ればまー手ぶれのリスクは回避できます。一応、手ぶれ補正のあるレンズですが、教科書通り「1/焦点距離」というところでしょうか。あとはズームレンズなのでいろいろと画角変えたり、動きながら撮るので最もリスクのないシャッタースピードとでも言いますか、まぁ、そんな感じです。

・ISO:200

これまた絞り同様「下げる余地」を残したいからです。5DMkⅡのISOは最小で100なんです。なのでとりあえず200にしている感じです。正直400でも良いかな?、と思うことはありますし、その辺は撮影状況で変えてます。ISO200で撮れば多少暗ければ400や800使えますし、明るければ100にして一段落とせばいいのでね。

最後にストロボに関して言えば1/4というのはリサイクルタイムも短く、「あと二段上げられる」という余裕と、「1/128」まで落とせるならあと5段分下げることができます。正直なところ1/4だと明るすぎる場合もあるので1/8とかも多用し、暗ければ逆にISOを上げることでリサイクルタイムの短縮やバッテリーの寿命を保つ場合もあります。これまた撮影状況に寄ります。

さて、ここでお気づきの方もいると思いますが、私の設定というのは「常に上下に変える余地がある」という点です。バスケットボールで言うところの「ピボット」のイメージです。なんと言いますか、軸を決めて常に動けるようにしておくと言った感じです。

どうですかね?こんな感じの説明で。

実際の撮影では前述の設定で、「テスト撮影→各種パラメーター調整→テスト撮影」を数回繰り返し「本撮影」という流れです。このとき頭の中は「絞り、シャッタースピード、ISO感度、ストロボの光量」の4つのパラメーターがグルグルします。

本当に「グルグルする」んです。それで私の場合はこの「グルグル」を数秒でやるのです。ちなみにこれは練習を積むことで誰でもできるようになります。そしてこれができるようになって初めて「露出計」が意味を持つのです。

 (まとめ)

・スタート地点(カメラの設定)をまず決める。

・設定変更は露出トライアングルフラッシュエクスポージャーの原理原則に基づいており、特別なことは何もしていない。

・ひたすら練習することで身に付く技術です。

こんなところでしょうか。プロだから何か違うことしてるんじゃないのか?と変な期待をされている方も少なくないように思いますが実のところ基本に忠実に、それぞれの設定値の意味をきちんと理解すること、これだけです。

いずれにせよ一度試してみてください。

●第7回ワークショップのご案内

次回は8月24日(土)の開催です。(まだ募集中です)

※すでにお申し込み頂いておりますが、当事務所規定の人数が集まらない場合中止の可能性があります。

※8/20(火)を締切とさせて頂きます。

※年内は毎月開催予定ですが、年明け以降のスケジュールは未定です。

 




ヒントは目の中に ~キャッチライトの話~ (後編)

さて、前回はキャッチライトの話の「前編」でした。それで今回は「後編」です。

それで後編で何をするかと言いますと、実際の写真でライティングをどのように推理するか?(※私の場合なのですべてのカメラマンがそうだということではありません)を解説します。

早速ですがお題となる写真はこちらです。

なぜこれをお題にしたかというと、単に「手元にあった」ので(笑)特にこのフリーペーパーと何ら関係ありませんよ。ちなみにしわしわなのは取り急ぎバッグに押し込んだらシワになり、スキャナもさほど精度高くないだけですので本誌の質とは関係ありません(念のため)。

さて、こうしてみるとよくある雑誌の表紙です。それでこの女優さんの目を見るとキャッチライトが見えますよね?

やはりこうしてみるとキャッチライトがあるとすごくすてきな雰囲気になります。特に女性の場合はキャッチライトでガラッと印象変わります。それでその目の中には丸いアンブレラらしきものが見えます。サイズは72インチくらいでしょうか。さらにアップで見ると;

ライティングはおそらくアンブレラだとは思うのですが、光源のサイズとしてはかなり大きいと思います。なので「フロント紗幕」の可能性も否定できません。また、中央に黒い人影らしきものが写っていますがこれは「カメラマン」です。また、カメラマンの左側にしゃがんでいる人影らしきものが見えてますが、これはアシスタントさんでしょうか。

なおこのライティングはカメラマンの真後ろから当てています。大きな光源の場合、こうした撮り方をしても被写体にカメラマンの影が被ることはありません(詳細についてはワークショップでは話していますがここでは割愛)。

さて、ダイアグラムを予想してみます(たぶんこうなんじゃないかなぁ、という私の推理ですよ);

念のため書きますが「これが正解」ということではなく、キャッチライトだけでこれだけのことが「推理可能」ということです。こういうことを日々やっておく、書店に行って気になったライティングはこうして頭の中にインプットしておきます。数が集まると今流行のライティングのトレンドや、その雑誌がどういう撮り方を好むのかなども分析できるようになります。

こうしてライティングの引き出しを増やす、というわけです。

(まとめ)

・キャッチライトから得られる情報は多い。

・今すぐ本屋さんで見ておいで♪楽しくてワクワクしますw

ちなみに渋谷界隈の書店の女性誌コーナーで「表紙だけガン見しているハゲたオッサン」がいたら私の可能性が高いですw(※声をかけて人違いでも私は知りません)

今回はこんなところで。

●第7回ワークショップのご案内

次回は8月24日(土)の開催です。(まだ募集中です)

※当事務所規定の人数が集まらない場合中止の可能性があります。

※年内は毎月開催予定ですが、年明け以降のスケジュールは未定です。

 




ヒントは目の中に ~キャッチライトの話~ (前編)

今回は「キャッチライト」の話です。

「キャッチライトって何?」と思われた方に説明しますと、撮影のときのライティングが目に写り込んだものを「キャッチライト」と言います。例えばこういう感じ。

瞳の中にソフトボックスが写り込んでいると思います。こういうことです。このキャッチライトがどう写り込んでいるかでモデルさんの印象はもちろん、写真全体の印象にも影響します。

それでこの写真↑はソフトボックスですが、ライティング機材以外にも「目の中の写り込み」にはいろんなものが写っています。カメラマンや周囲の人が写り込んでいることもあるし、どういうライティング機材を使っているかなども分かります。

なので雑誌などで気に入ったライティングがあったらとにかくモデルさんの「目の中」をじーーーっくり見ることです。

そこで今回はどの機材を使うとどういう写り込みをするか紹介します。

ちなみに当ブログは超低予算ですので、モデルさんを使えるわけもなく「サングラス」で目の代用してますからね。

●33インチホワイトアンブレラ


33インチなので小さめですが、立派に写り込んでいます。

●60インチホワイトアンブレラ


キャッチライトを作るポイントは、大きな光源は大きく写り込む、ということです。

そして次;

●33インチシルバーアンブレラ


これはシルバーアンブレラですがホワイトアンブレラとは違って硬い光質です。また、シルバー面がキャッチライトにも写り込んでいます。

●60インチシルバーアンブレラ


おそらくこの60インチかそれ以上のサイズのこうした「シルバーアンブレラの写り込み」はファッション系雑誌の表紙で頻繁に見かけます。「あ!」と思った方もいるのでは?と思います。

●ソフトボックス(長方形)


長方形のソフトボックスです。これは一番最初のサンプルに似ています。ちなみにこれは「縦」に使っていますがブームアームを使って「真上」や「上下(この場合二つ)」から当てて使うこともあります。これについてはキャッチライトの理屈が分かっていれば初見でも「ああ!」とすぐ分かります。

●ソフトボックス(オクタゴン)


丸いキャッチライトが特徴です。それで長方形とオクタゴンでは何が違うか?と聞かれるんですが、「キャッチライトが違う」のです。日本では人気がないと言いますか、馴染みが無いのですが、欧米ではポートレート撮影で使うならオクタゴンがポピュラーです。特に「一灯」しか使わないときなどソフトな光を照射しつつ、キャッチライトも丸く綺麗です。移動が多いウェディング撮影なんかでも使われているのを見かけます。

それで最後になりますが、最近頻繁に見かけるようになったビューティーディッシュ(いわゆるオパライト)です。


これはファッション系ではかなり人気のあるライティングです。コントラストの効いた光質が特徴で、キャッチライトもまん丸に写り込みます。特に欧米系のファッション誌では頻繁に使われているライティングです。これでビシッと決まると本当に印象的に撮れます。

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さて、今回はサングラスで代用していますが、人間の目では写り方が変わります(当たり前ですが人の目は「球体」なので)。ただ、今回紹介したそれぞれの機材の写り込みの特徴や形を覚えておけば、他の写真を見たときにどういうライティングでどういう角度で当てているかが容易に推理できるようになります。

(まとめ)

・キャッチライトもライティングの重要な要素の一つ。

・ライティング機材によって写り込むキャッチライトの形や大きさが違う。それによって写真の印象も変わる。

・キャッチライトの大きさは、光源の大きさに依存する。

こんなところでしょうか。

次回は「後編」ということで「どのように推理するか」をご紹介しますが、そんなの待つくらいなら書店に行って雑誌の表紙のモデルさんたちの「目の中」をじっくり見てみてください。ここで書いていることがすごーーーくよく分かりますから。

※すっかり忘れてましたがワークショップの募集まだしてますので合わせてよろしくお願いします。

※今回はギリギリになって「まだ空いてますか」ってのは勘弁してください<(_ _)>私の手違いで開催日に別件と被ってしまい、「!!!」と慌てたのですが、ワークショップのほうが先にスケジュール決めていたものの、今回は募集人数に達しなさそうなら早々に中止決定するかも知れません。




「適正露出」なんて無い。~アンケート結果~

先日の「『適正露出』なんて無い。」の中で実施しましたアンケートの話です。

ご回答頂きました皆さんありがとうございました。

当サイトの読者数に対して集まった母数が少ないのですが結果としては;

A:中央部重点測光で自動的に決められた露出

9.4%

B:Aの露出を露出補正で+1段。

53.1%

C:Bの露出を露出補正で+1段(Aの露出の+2段)。

37.5%

と言った結果でした。

ここから見えてくるのはやはり結果は「バラバラ」ということです。また、頂いたコメントをご紹介すると;

「被写体がちょっと気持ち悪いですー」

と言う人もいれば;

「美味しそうです」

と言う人もいました。この両者のコメントは特徴的です。要するに見る人によって写真の印象なんて変わると言うことでもあります。今回、私のミスで聞き忘れましたが性別や年齢も質問に加えるともう少し面白いことが見えたとも思います。

露出に限らず、アングルや被写界深度にはその時代のトレンドがあるのも事実です。この辺は料理写真を撮っているカメラマンなら経験的に感じている方は多いと思うのですが、洋服や音楽に流行があるように、写真にも流行はあります。

あと、BとCの「中間」というコメントもあり、もしかすると「BとCの中間くらい」が着地点なのかも知れませんが、今回のアンケートはあくまで「実験」なのでシビアな差ではなくザックリとした「差」にしてます。むしろあの三枚の写真をさらに1/3段ずつずらすという方法もありますが、さすがにそれはメンドイw

最後に;

入射光式露出計で測光すると適正はBとCの間くらいでは?

というコメントを頂いたのですが、入射光式で測定(いわゆる単体露出計で測定)しても、そもそものイメージ全体のトーンが決まっていないと入射光式だろうが反射光式だろうが関係ないです。

単体露出計というのはあくまで「測定器」です。

簡単に説明すると、絞りやシャッタースピード、ISO感度の3つ(露出トライアングル)のいずれかを任意に決めた後に測定するのが単体露出計です。主にカメラに内蔵されている反射光式の露出計測方法とはそもそもが違います。

今、反射式の単体露出計を使うことってほとんど無いと思うので、皆さんご存じの「カメラ内蔵の場合」と限定すると、あれってカメラが測定し、その結果を「自動的にカメラが設定を変えている」だけです。また、カメラ内蔵の反射式測光方法にも、評価測光、部分測光、スポット測光、中央部重点平均測光とあります(※キャノン5DmarkⅡの場合。皆さんは使っているカメラのマニュアルを見てみてください)。

それでこうして4種類も測光方式があるということは、そもそも自動的に正しい露出を提示する測光方式なんぞ無い、ということのように思います。

さて、それで任意に決めた後」と前述しましたが、ポイントは;

・ストロボ光の場合:シャッタースピードとISO感度

・自然光(定常光)の場合:絞り(もしくはシャッタースピード)とISO感度

を決定したあとに「測定」し、光が多い、足りないを判断します。光が足りなければ増やす、多ければ減らす、そのために「測定」するわけです。この光を増やす、減らすという概念については「フラッシュエクスポージャー」で解説した考え方が必要になります。

一方、反射式(この場合はカメラ内蔵を意味しています)の場合は、カメラの各種モードで撮影するわけですがカメラが勝手に「適正と思われる露出を計算し、カメラの設定を自動的にしてくれる」だけです。

また、wikipediaで「適正露出」を調べると

撮影された写真が人間から見て自然な明るさ・色彩で表現される露出を適正露出という。

と、書いてあることからも分かるように、「抽象的、且つ曖昧」です。また、「色彩」の感じ方は人種や住んでいる地域によって違います。南国が「原色系」で北欧が「淡色系(パステルカラーと言われている色彩)」からも分かるかな?と思います。

いずれにせよ一度「露出トライアングル」と「フラッシュエクスポージャー」を復習しておいてください。

なんつうか、おそらくこの辺を難しいと思ってしまうのはすべてが「点」だからだと思うんですよね。でもね、よーく考えて貰うとこうした概念をまとめたものが「撮影のときのカメラの設定」なんです。要するにすべて「繋がっている(「点」じゃなく「線」ね)」のです。この「繋がっている感じ」さえイメージできれば正直「楽勝」です。そうすると自然と単体露出計なんぞは単なる「計測器」ということが分かりますからね。

(まとめ)

あんまり難しく考えないこと。

です。

いずれにせよ露出に正解なんて無い、ということは今回のアンケート(というか実験)で分かったかと思います。

(おまけ)

かなり本質的なことを書いたつもりなんですが、完全にテキスト(活字)なのでおそらくちゃんと読んでくれる人はいないんじゃねーかな?と思います(T_T)

 

 

 




「適正露出」なんて無い。

今回は「適正露出」の話です。

それでなぜ、こんな話をするかと言いますと、「露出計の説明をして欲しい」という要望が少なからずあります。要するに「露出計で計測した露出が『適正露出』だから『正解』なんでしょ?」ということだと思うのですが、これは間違いです

たびたび書いておりますが、「撮影意図」が最優先であって「露出」というのは後回しです

※念のために書きますが、「露出計」を使うことが「正解」ではありませんからね。露出計はあくまで「計測器」であって「正解を示してくれる機械」ではありません。電卓と同じで使い方を間違ったり、そもそも計算が間違っていたら全く意味がありません。ここを誤解している人たちが本当に多いです。

また、「適正露出」という言葉の使い方がおかしいと言いますか、何というか・・・・。英語では「Perfect Exposure」と言ったりしますが、ニュアンスとしては「そうそうこれこれ!」みたいな使われ方だと思います。

要するに「適正露出」にも「Perfect Exposure」にもこれと言って客観的な指標があるわけではない、ということです。

さて、ここで「おいおい、何を言っているんだお前は!」という方に質問です。

次の三つの写真で「適正露出」はどれですか?

●A:F4.0、1/125、ISO200

●B:F4.0、1/60、ISO200

●C:F4.0、1/30、ISO200

さて、どうでしょうか?どれが「適正露出」ですか?

それぞれの露出を解説すると;

●A:中央部重点測光で自動的に決められた露出(←おそらく「正解」を欲しがる人たちの一般的な「適正露出」と思っている露出)。

●B:Aの露出を露出補正で+1段。

●C:Bの露出を露出補正で+1段(Aの露出の+2段)。

です。

おそらくあなたが選んだのは「適正露出」ではなく「好きな露出(というか「写真」)」だと思います。

違いますか?ね?

なので「適正露出」というよりは、「どれが一番好きですか?」が正しい聞き方で、「適正露出」という言葉の意味とは違います。複数の人にこの三種類の写真を見せ、投票してもらうとバラバラの結果になると思います(※ワークショップで実験済み)。ある程度偏る結果になると思いますが、「全員一致」はしません。

これが「適正露出なんて無い」と言っている理由です。

そうは言いつつさらに、皆さんからの回答を集計してみたいと思います。

Q.「適正露出はどれですか?」(←クリックするとアンケート画面に移動します)

(※統計的に信頼足る母数が集まれば後日紹介しますので是非ご協力お願いします♪&自由にコメントを書ける欄もご用意しましたw)

要するに(何度も書いていますが)自分がどういう撮影イメージで撮るかの方がはるかに重要です。

それで測光方式にもよりますが、あくまで「目安」であって欲しい撮影イメージとは違うことが多々あるということです。

(まとめ)

・「適正露出」は幻想であり、露出に「正解」はない。

・正解があるとすればそれは「撮影意図」に依存する。

・その写真を使う人が納得する露出が正しい露出。プロならば「お客が納得」すれば良いのです

また、ときおり知ったかぶりの人が「ハイキーだからダメ」とか「ローキーだからダメ」などとほざくアホ人がいますが、ハイキーがダメ、ローキーがダメ、なーんてことは一切ありません。そもそも写真に「ダメ」なんて無いんです。同様にヒストグラムを見て善し悪し判断するアホ人もいますがこれなんて愚の骨頂です。

そこにあるのは「好きか嫌いか」、「アリかナシか」だけです。

極端な話が写真の善し悪しなんてものは、その人の好みです。

こうした話を前提にいずれ「露出計」の解説をする予定です。

(※口頭だと5分で説明できるんだけど、文章で説明するのほんと難しいんですよ・・・、しょせん「計測器」なのに・・・(T_T))




透明な物を白バック飛ばしで撮る。




ハニカムグリッドを活用する。

以前、「ハニカムグリッドを作る!」というネタを書きましたが、これが全く反響がないw

一方、「スヌート」はけっこう評判良いんですよ。おそらく「作りやすさ」という点もあるかと思いますが、今回は今一度「ハニカムグリッド」を活用してみては?というお話をします。

英語では「Honeycomb」と書くのですが要するに「蜂の巣状」ってことです。「ハニカムグリッド」と呼んでみたり、略して「グリッド」と言ったりもします。

ただ、残念なことに、ハニカムグリッドは「メインのライティング」というよりは知っておいて損はない、小技として使いたい、みたいな感じの存在であることは確かです。しかしながらこれを知っているとけっこうライティングのバリエーションが増えることは間違いないです。

また、いろいろな種類のハニカムグリッドがあるのでまずはそれらを紹介します。

●クリップオンストロボ用

こちらはクリップオンストロボの発光部分にそのまま付けるタイプです。実際に使って撮ったのが今回のトップの写真です。光に指向性が出るのでスポット照明としても使えます。スヌートに近いのですがスヌートよりもさらに輪郭がクッキリしているのが特徴です。ちなみにグリッド無しで照射するとこうなります。

グリッドの有り無しの違いは明白です。

ちなみにこのタイプは小さくて持ち運びも便利なのでカメラバッグに一つ忍ばせておくとチョイチョイ使えます。自作することも可能です。

●ソフトボックス用

次はソフトボックス用です。

ちなみにですが、ここで書いている、SB-080とかSB-090というのはこれらのことです;
   

なんかヒモ状の物体なので初めて見る人はさっぱり分からないかも知れません。取り付けるとこうなります。

こうなると「!」と思った方もいるんじゃないでしょうか。スタジオライティングでは頻繁に使われていますから。

さて、これを使うとどうなるかと言いますと;

正直なところ何が違うか分かりづらいと思うのですが、よーく「背景」を見てもらうと「グリッド有り」のほうは暗くなっています。これがグリッドの指向性を表現しているのです。分かりづらいので図で説明します。

●グリッド無し

グリッド無しの状態(通常)の場合、光が照射面やその周囲に光が回ります。

●グリッド有り

グリッド有りの場合、光に指向性(直進性)が生まれるので周囲に光が回りづらくなり、その結果暗くなるということです。原理としてはこういう違いですが、光をコントロールする上で、こうした指向性はけっこう重宝します。この応用で白い背景をグレーっぽくみせることができるわけです。

●ビューティディッシュ(オパライト)

ビューティディッシュのグリッドを紹介します。外観はこういうものです。

取り付けるとこうなります。

使うとこうなります。

他の例と同様、グリッドの無い場合は光が全体に広がり、グリッドを有りの場合は指向性があります。なお、この指向性については「グリッドのサイズ(穴の大きさ)」で変わります(小さいほど指向性・集光性が高くなります)。

 ●雑ながらわかりやすさ優先の撮影例

それで実際の使用例を一つご紹介(いささか雑な感じですがそこはご容赦ください)。

これはグリッドを使ったオーソドックスな例です。グリッドは2つ使っています。

ソフトボックスにグリッドを付けて背景を暗くし、暗くなった背景にクリップオンストロボ用のグリッドでアクセントとして部分的に明るくしています。こういう使い方はポートレートでよく使われてます。

また、後ろのストロボにカラージェルを付けて色を付けるやり方もよく見かけます。

これなんかは「ああ!」と思われる方がおられると思います。地味なライティングテクニックなので目立ちませんが、実はこういう使い方もあるということは覚えておいてください。

いずれにせよまだまだハニカムグリッドは応用の余地があることは確かです。

(まとめ)

・ハニカムグリッドはメインのライティングと言うより小技に使える。

・ライティングのアクセントとして使うオーソドックスな機材。

・メインにはならないからこそ応用性が高い。

とりあえずこれくらいですが、ハニカムグリッドをもう少し活用してみてはどうでしょうか?というお話でした。