Category Archives: 撮影テクニック

開放で撮ってみる。

さて、久しぶりの更新ですが、今回はライティングの話からちょっと逸れて、「開放撮影」のテクニックです。

「開放撮影」というのはいわゆる「長時間露光」というやつでシャッタースピードを遅くし、シャッターを開放で撮影するという伝統的な撮影テクニックです。

レンズを絞り込む、もしくは減光フィルターを使うわけですが、考え方としては「露出トライアングル」と同じです。

一般的には夜景や暗いところでの撮影に使われるテクニックですし、実際にやったことがある方も多いと思います。ただ、そこを一歩踏み込んで使うと動く被写体を「消す」もしくは「流れるように」撮れるんです。

これはこれで知っておくと撮影意図の幅が広がるという訳です。

ただ、一つ面倒なのは時間帯や周囲の明るさ、動く被写体によってかなり制限を受けてしまうという点です。

実際のところ今回のサンプルは分かりやすいようにと思って早朝(5:30am頃)渋谷の交差点で撮ったのですが想像以上に人が多くて人影を完全に消せませんでした(T_T)ただ、そうは言いつつも「消えそうな雰囲気」は伝わるかと思います。

それでは説明します。まずは、普通に撮影するとこういう感じ;

早朝の渋谷駅前の交差点ですが、けっこう人がいますね。皆さん信号を渡る気満々です。そこで人が信号を渡り始めた時に撮影したのがこちら。

人が消えている(もしくは「消えそう」)ように見えません?か?

見た感じ「惜しい!」と言った感じもしますが、長時間露光するとこういうことができる訳です。

ただ、ちょっとおかしなのは絞りが「45」ということです。前述しましたが、露光時間を延ばすのは「被写体の動き」に依存するので露光時間が延びればそれだけ光の量が増えてしまいます。

ここはわかりますよね?

それでこの長時間露光の際に、光の量を減らすには減光フィルターを使うか、レンズの絞りを絞るしか無いのです。

ただ、一般的なレンズは絞りはせいぜい「F22」くらいまでです。それでは私は何のレンズを使ったか?

正解は「マクロレンズ」です。

ここで「マクロレンズ?」と思った方もいるかと思いますが、接写ができるというだけで、別にスナップ撮影にも使えます。また、今回使ったのはシグマの50mmマクロレンズですがこれは絞りがF45まで使えます。これだと被写界深度が犠牲になりますが、わざわざ減光フィルターを買う必要はありません。以前もマクロレンズを使った例を紹介しましたが、マクロレンズだからと言って接写にしか使えないという訳ではありません。こうしたトリッキーな撮影をするときはむしろ絞りがF45まで使えるというのは便利です。

と、いうことで開放で撮影するというのは知っていて損の無いテクニックですし、数回練習するとコツが掴めると思います。

ではまた。

(ワークショップの告知)

今月開催予定のワークショップですが募集中です。

今回も当事務所規定の人数が集まらなければ開催を見送ります。20日(火)頃に締め切るつもりですのでご希望の方はお早めに。

こちらもよろしくお願いします。




ソフトボックスの照射位置考察 ~後編~

さて、前回はソフトボックスを「横から当てる」というテクニックを紹介しました。

それで今回はちょっと小手先テクニックにはなってしまいますが「後ろから当てる」パターンについて紹介します。

まぁ、どちらかというと「横」をやったので一応「後ろ」もやろうかな、ということです。それで今回は以下の3パターン;

では早速見ていきます。

●Aのパターン

パッと見た感じ悪ふざけにも見えなくもないのですが、まぁ、そこは考察なのでね。

被写体から離れたところにありますが、それなりに光が当たっています。

これだけだとわかりづらいのでもう少し被写体に寄ってみます。

白く線を引いたあたりにリムライトっぽい光の感じが出ています。全体的に光が回っているように見えなくもないのですが、この程度なら撮影環境に依存する部分でもありますので一概には言えません。

ひとまず「こういうもんだ」くらいでいいのかな?とは思います。

さて、次。

●Bのパターン

こちらはAのときよりも被写体に近づいているのでよりリムライトとしての効果が出ています。

とりあえずこちらももう少し近くで見てみます。

さて、よく見ると前回の「横」と違い、被写体の正面全体に影付きはなく、全体的にフラットな感じの光が回っています。この写真だけで説明するのは難しいのですが、大きな光源から照射される光は被写体を被い包むように光が回る(ラッピング効果と言ったりします)性質があります。後述しますが最近の女性誌にはこのラッピング効果を使った撮り方しているものが増えているように思います。

●Cのパターン

単純に真後ろですが、これは「白バック飛ばし」ですね。いろいろなところで言っていますがソフトボックスは白バックとばしの背景に使えます(アンブレラでもできますが)。それで「ラッピング効果」について前述しましたが、背景の露出をオーバー気味にするとこういう効果が得られます。

被写体全体が白っぽく、なんというか「ほわーっとした感じ」と言いますか、白っぽくなっているのがラッピング効果の特徴です。これを言葉でどう表現するか難しいところですが、英語ではSilkyとかMilkyとか言うみたいです。ただ、この辺は表現する人のボキャブラリーに依存するところかとは思います。

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いずれにせよソフトボックス、アンブレラ、いずれも「前から当てるだけ」ではなく撮影場所や広さなど、いろいろとバリエーションを増やせるシチュエーションは多いです。この辺は撮影時に「冷静に、落ち着いて現場を観察する」ことも必要ということです。

(まとめ)

・前から当てるだけがライティングではない。参考:「光は前から当てるとは限らない」

・撮影場所やスペースで臨機応変にセッティングすることでバリエーションが増やせる。

・白バックとばしの背景としてソフトボックスを使うというのは意外と使えるテクニック。

今回のところはこんなところで。

(蛇足)

22日開催のワークショップは当事務所規定の募集人数に達したので開催です。久しぶりなので当日までにカリキュラムの見直しとシミュレーションをするつもりです。私自身、このワークショップを繰り返し、受講者の方々のリアクション見ながら話方変えたりしてます。おかげでかなりしっかりと「原理原則」に徹底したカリキュラムになっていると思います。

ちなみに現時点で三月開催は未定です(私のスケジュール次第ですが、直前に告知しても誰も来ない可能性あるので迷っています)。

 




ソフトボックスの照射位置考察 ~前編~

今回は「ソフトボックスの照射位置」についてです。

ソフトボックスはアンブレラと違い、ちょっと高級なイメージのあるライティング機材であり、またアンブレラとは違って光に「指向性」があったり、グリッド付けることができたり「拡張性」があるのが特徴です。また、ディフューザー越しに面光源が作れるので「疑似窓」としても使われます。

そこで今回は応用例と言いますか、大胆に「前からではなく横から当てる」とどうなるかをご紹介します。

今回試したのは以下の4パターン;

被写体の真横一列です。けっこう基本的というか単純なことですが、これだけで「影の付き方」が変わるのと、一つしかない機材でもバリエーションを作る方法として覚えておくと良いです。

では早速;

●Aのパターン

ほぼ真後ろです。被写体の背面にうっすら光が当たる程度。

影付きが云々というよりはリムライトに近い光の塩梅です。

●Bのパターン

こちらは「真横」です。

モデルがぬいぐるみなので実際の人物撮影の質感を表現できていませんが、かおの中央から右側に影が付いています。影を強調し、陰影をはっきりさせたい、ちょっとハードなイメージで撮る場合なんかに使えそうです。

●Cのパターン

こちらは被写体よりも手前に設置しているパターンです。被写体にあたり光量自体はこの前の2つよりも少ないですが、表面の影付きが柔らかいです。

さて、ここでBとCの比較をしてみます。

どうでしょうか?違いがわかりますでしょうか?ついでに書いてしまうとここで見るべきポイントは;

・被写体の影付き

・背景の色(光の当たり具合)

です。

まず、被写体の影付きについてですが、「C」のように被写体の「表面を狙う方法」というのはsurfacingとか言って、ライティングテクニックとして存在しています。要するに被写体の表面に光を回り込ませるテクニックでこの効果の強弱は照射面積に依存します。

次に背景の色ですがCは背景よりも離れているのでグレー(すなわち光量落ち)になっています。ここのポイントは白背景をグレーっぽく見せたければ背景から離してやるということです。

そして最後に;

●Dのパターン

被写体から完全に離れた位置にソフトボックス置いてます。

4つのパターンの中で一番被写体に光が当たっていない(光量が少ない)わけですが、「光の周り具合」ではCよりも回っています。

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こうしてみるとソフトボックス一つでも、設置位置によってバリエーションを増やすことができるというわけです。

(まとめ)

・ソフトボックス一つでバリエーションを増やすことはできる。

・アンブレラも同様に位置を変えることでバリエーションを作れるが、光の指向性に関してはソフトボックスの方が上。

・背景に回る光量をコントロールすることもライティングテクニックの一つ。

ひとまずこんなところで。




光学スレーブ活用してる?

今回はクリップオンストロボの内蔵機能である「光学スレーブ」の活用法について。

以前、「オフカメラストロボの種類を知る!~前編~」でスレーブの種類について解説してますのでその応用的な話になります。

さて、クリップオンストロボの内蔵機能に他のストロボの光に反応してストロボを発光させる機能があります。ちなみにこの機能はたいていのクリップオンストロボに付いている機能じゃなかろうか?と思います。特に中級モデル以上というかガイドナンバー40以上の製品には付いている機能だと思います(※お持ちのストロボの説明書をよく読んでくださいね。意外とこの機能については書かれてないというか「分かりづらく書かれている」場合がありますので。)

例えばYN560シリーズだとモード設定で「S1」がこの機能に該当します。

それでこの機能を使うと何ができるかというと、1組のラジオスレーブで複数のストロボを発光させられるのです。

これは覚えておくと便利です、というか「白バック飛ばし」をやるときなんかはかなり便利です。

例えば典型的な白バック飛ばしのセッティングってこんな感じだと思います;

これは典型的なセッティングでストロボを3本使ってます。それで普通なら「ストロボ3本=ラジオスレーブの受信機3個」となると思いますが、室内でやるレベルなら受信機1個で他のストロボ2本を光学スレーブで発光させることができます。

実際にうちのスタジオでやるときはこの方法です。そもそもラジオスレーブ3個用意するのもお金がかかるし、もっと言ってしまえばそのためにいちいち受信機取り付けるのが面倒です。

●応用例

他にもこの光学スレーブの使い道はあって、「ちょっと光を足したい」ときにも威力を発揮します。

例えば商品撮影のとき;

こうして被写体の背後が暗いときなんかに影を消したい部分に光学スレーブ設定したストロボを置けば良いんです。

ただ、影を消したいだけなのでかなり置き方が雑ですが、目的は達成しています。この程度のことでいちいちラジオスレーブの受信機出してきてセッティングするなんて作業効率悪すぎます。それでこのストロボを拡大してみると;

受光部がメインのストロボ光の方を向くようにするのがポイントですが、さほどナーバスにならなくても良いと思います。

あとは好みというか、不安だったり、撮影環境が明るすぎるようであればストロボの数と同数のラジオスレーブを揃えれば良いわけですが、かといってストロボと同数のラジオスレーブが無いからと言ってできないわけでもない、ということです。

(まとめ)

・ラジオスレーブは一組あればけっこういろんなことができる。

よくよく考えると、個人的には今年はほぼ一組のラジオスレーブだけしか使ってなかったように思います。

ひとまず。




コラム:たまには応用例でも。

さて、本日のお題は「応用例」です。そしてなぜ今回は「コラム扱い」かと言いますと、ここのネタにするつもりもなく、ただの商品撮影の一環としてやったのですがあとで振り返ると「ああ、もっとブログのコンテンツ用に撮れば良かった」と反省したから「コラム」なのです(※「コラム」なので雑談も少々入ります)。

さて、これは何かというと「アダプター」です。「何アダプター」かなんて分かりません。英語では「stud」とか「Screw Adapter」とか「Thread Adapter」とか言うみたいですが、正確な呼称なんて無さそうです。要するに何かと何かをつなぐもので、分け方としては「オスメス」があるということです。

ちなみに、英語でもmale、femaleという分け方です。

そんな話はさておき、先日、スタジオで三千円撮影会をしたのですがその合間にスタッフ向けに練習かねて商品撮影を実践したんです。ちなみにこれは一般的にはこんな感じで売られています。

なにやらゴミが写ってますが、まぁ、こんな感じです。これはこれで良いと思いますし、世間はこれで納得すると思います(※そもそも興味がないかも知れませんがw)。

ただ、これじゃつまらないわけですよね?どうですか?

ジョーマクナリー風に言うと「パンチとドラマがない」んですよ。また、基本的に「せっかく作っても(撮っても)誰も観ないんでしょ?」みたいな商品写真の場合は「思い切り自由にやる♪」のが当事務所のポリシーなので、じゃあちょっと「パンチとドラマ」を入れてやろうかと。

それでこのときはこのテクニックの応用です;

透明なモノを白バック飛ばしで輪郭残しつつ撮る(タイトル長っ!)

要するに「透過物」ではありませんが、やたらと光が回る被写体です。また、このときは私の商品撮影のときの定番機材SB-060を使いました;

それでこれを後ろから当てるのですがただあてるとこうなってしまいます。

人によってはアリなんでしょうが、これだと飛びすぎてしまってます(私の主観)。

そこで手作りレフ板の登場です。

ここからが本番ですw

ここから徐々に被写体を後ろにづらしながら「欲しいイメージ」に近づけるわけです。

ほーら、来た来た♪

ほーらね♪

原理としては光の「ラッピング効果(光が回り込む効果ね)」を両サイドにレフ板を置いて「回りすぎる光を遮断してやる」というところがポイントです。そんなに難しくありませんよ。

(※「レフ板」と表記してしまいましたが「遮光板」として使ってますからね)

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かなり細かいところ割愛してますが、「原理原則」は全く同じです。そこに「隠し事」や「秘密」は無いです。

だって、同じでしょ?(※途中被写体変わりましたがこちらのサイトで観てくださいw)

まとめ;

・基本があるから応用ができるのです。トリッキーなことなんて何もない。

(おまけ)

前述した光源と同じ光で、正面から光を当て、手前にレフ板を置いて光を起こしています。

これだけでも被写体の両サイドに白く写り込みを作ることは可能で、撮ったあとにフォトショップで加工すれば良いんです。

これも応用と言えば応用ですが、前述した撮り方よりもオーソドックスなやり方じゃないでしょうかね。

ひとまずご参考まで。

 




カメラのヒストグラムを活用する。

今回はカメラのヒストグラムのお話です。

一眼デジカメにはヒストグラムの表示機能が付いてます。こんな感じで;

それでこれは【輝度表示】でもう一つ【RGB表示】というのがありますが、今回はこの「輝度表示」を活用してみましょう、というお話です。ちなみにこの奇妙なグラフを見て「ゾッとする」人もいるんじゃないでしょうか?

ただ、これは単純に「明るさ」と「暗さ」をグラフにしているだけで、ザックリとでいいので理解してしまえばなんてことはありません。見方は単純で;

明るい部分を「ハイキー」とか暗い部分を「ローキー」と言ったりもしますが、写真全体に占める明るさや暗さの割合を示しているだけです。

カメラの説明書なんかには↑くらいのヒストグラムで「普通の明るさ」と表現していたりもしますが、以前も書きましたが「適正露出なんて無い」ので別に「普通の明るさ」なんてどこぞに書かれていても気にしなくていいです。

(参考)

・適正露出なんて無い。(上)

・適正露出なんて無い。(下)

さて、それでこの輝度のヒストグラムですが、白バック飛ばし、黒バック潰しの時に使うと便利です。

●白バック飛ばし

白バック飛ばしの時に本当に白く潰れているのかを確認するのに使います。例えばこの写真;

典型的な「白バック飛ばし」です。それでこのヒストグラムはこうなっています。

グラフが右にガッツリ寄っているのは「明るい部分」が多いからで、白バック飛ばしで撮る時はその場で撮影後にこのヒストグラムで確認できるというわけです。実際のところ白バック飛ばしで撮ると本当に白く飛んでいるか不安になることも多いのですがこうしてヒストグラムで確認することで失敗リスクを減らせます。

そして逆に;

●黒バック潰し

黒バック潰しも白バック飛ばし同様、撮っているときに本当に黒く潰れているのか?という不安があります。例えば;

この写真ですが背景を黒く潰しています、が、本当に黒く潰れているのかヒストグラムを見ると;

今度は左にドーンと寄っています。これで「黒い部分が多い」ということが分かります。

それでこうしたヒストグラムの使い方は万全ではないのですが、白バック飛ばし、黒バック飛ばし、いずれもきちんと飛んでいなかったり潰れていないことがけっこうあります。

むろん、撮影後にフォトショップなどで加工することを想定していますが、撮影時に解決できる問題は解決しておくことはきわめて重要なのでこうしてヒストグラムで「念のため確認」するわけです。

どうでしょうか?少しはヒストグラムを使ってみようという気になりましたかね?

●「ハイライト警告表示」の活用

一眼デジカメや一部コンデジには「白飛びしている部分を点滅させて教えてくれる」という機能があります。「ハイライト警告表示」と言ったり、カメラメーカーによって呼称が違うようです。ちなみにこういう奴ですね。

撮影後に液晶モニタ見るとこうして白飛びした部分が点滅している機能のことです。ちなみに「警告表示」という呼称を使うから世間では白飛び=極悪みたいに思われがちな気がするのですが、私の気のせいでしょうか?

さて、この機能の良いところはこうして撮影したときに白く飛んでいない部分を簡単に確認できることです。ヒストグラムだけではこうした確認はできません。それで↑の写真では右側が白く飛んでいないのが分かります。

ここで飛んでいない部分を確認し、ストロボの位置を調整して撮り直します。

ストロボの位置を調整して撮り直しました。四隅がきちんと飛んでいないのですがこの程度ならフォトショップで加工してもすぐ直せます。

こうして「ハイライト表示警告機能」を「白バック飛ばし確認機能」として使うのもテクニックです。

(まとめ)

・ザックリで構わないので使い方を覚えると輝度表示のヒストグラムは便利ですよ。

ということでこんなところで。




天井バウンス考察 ~前編~

今回は「天井バウンス」について考察してみます。よく「天バン」と言われている奴です。「天バン」という略語は「天井バウンス」の略語だと思われるのですが、時折「天井バンス」という方もいらっしゃいます。これはあくまで「Bounce」の略なのでお間違いないように。

それでなぜ「考察」かと言いますと、私自身は「天バン」を滅多にやらないからです(※「壁バン」はちょいちょいやります)。また、今回は影の付き方、というよりは「光の回り方」にスポットを当てています。

それでまずは一番ベタな奴から見てみましょう。

●その1:90度天バン

これはストロボに何も付けず、ただストロボヘッドを天井に向けています。

ただ、そもそも天バンは「天井が低くないと効果がない」です。当スタジオの天井高は2.3mです。なのでそれなりに効果はありますが、天井の高いところだと天バンの効果は期待できません。ただ、天井高を全くものともしない光量のストロボを使えば話は別ですが。

ちなみに、ストロボを発光しないとこういう感じです;

真っ暗です。カメラの設定はISO200、シャッタースピード1/100、絞りはF5.6で、ストロボは1/4(GN58)です。

これをスタートラインと言いますか基準点とし、いろいろ見てみましょう。

さて次:

●その2:45度天バン

ストロボのヘッド部分を45度傾けました。ノーマル天バンよりも被写体に当たる光量が多いのが分かります。

そこで、一つ重要なのは「入射角と反射角」です。光というのは「直進する」という性質があり、光は当たる角度と同じ角度で反射するのです(※「入射角と反射角」については改めて解説予定)。この理屈を理解しているとストロボヘッドを45度に傾けるとどういう結果になるか容易に想像できます。

ひとまずこの二つを比較するとこうなります;

注目すべきポイントは、光の当たっている面が移動している点。90度の場合は天井に反射した光はそのまま90度(この場合真下)に反射していて、一方45度は前方に光が飛んでいる点です。被写体に当たっている光の明るさが異なるのがおわかりになると思います。

●その3:90度キャップディフューザー付き

今度は90度天バンですが、いわゆるキャップディフューザーを付けています。

この場合、「何も付けていない90度天バン」よりは光がディフューズされています。天井に当たっている光の輪郭がぼやけているのが分かります。また、それに加えてストロボ周辺が明るくなっています。

キャップタイプのディフューザーを付けると、その「ディフューザー部分」が発光体になるため、周辺にも光が飛んでいるのが分かります。

こうしてみるとキャップディフューザー付きのほうが何も付けていない状態よりも光が柔らかく、光も回っています。天井が高いような場所であえて天バンさせるような撮り方をするならこういうキャップディフューザーを使うとストロボ周辺にも光が多少なり回るので有効かと思います。

それでここでややこしいことを一つ言いますと、光は反射する物が無いと可視化できない、ということです。キャップディフューザー「有り」も「無し」も同じ光量でストロボを発光させているのですが、「有り」は発光しているのが分かりますが「無し」は発光しているのが分かりません。また、「光の明暗」は反射しているものがあるから分かるのであって、反射するものが無いと分からないということの裏返しでもあります(※実にややこしい理屈で伝わっているかいささか不安ではあります)。

●その4:バウンスボード

さて、前述した「ややこしい理屈」を踏まえ次に進みますが、皆さんお持ちのクリップオンストロボにこういうのが付いているタイプを使っている方は多いと思います。

これはバウンスボードとかキャッチライトパネルと言われているものです。個人的には使ったことないので効果のほどはよく知りませんが、何も付けない天バンの場合、被写体(人物)の目にはキャッチライトが入りません。そこでこのパネルを使うことでキャッチライトを入れるわけです。ちなみにこれを使ってバウンスさせるとこうなります。

何も付けない90度バウンスと違うのは天井に当たった光が切れているってことでしょうか。「バウンスボード」と言われる所以としてはストロボ後方に飛ぶ光を前方に反射する、という意味も含まれていると思いますが、これを使うことで特別前方に飛ぶ光量が増えているようには見えません。なのでやはりあくまで「キャッチライトを入れる」のが目的のようにも思います。

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ひとまず今回はオーソドックスな天バンについて考察しました。後編ではモディファイヤーを使った考察をします。

(まとめ)

・天井バウンスは天井が低くないと効果が期待できない。

・入射角と反射角の関係を意識する。

・光は反射するものが無いと可視化できない。

ひとまずこれくらい押さえておけばいいんじゃないでしょうか。

【ワークショップはこちらから↓】

今月と来月のあと二回だと思うとちょっとしんみりします。。。。




透明なモノを白バック飛ばしで輪郭残しつつ撮る(タイトル長っ!)

前回の更新からいささか空いてしまいました。年内ちょっとバタバタしそうなので更新頻度が落ちるかも知れませんがご容赦ください。もう今年も残すところあと二ヶ月なんですよね・・・(しんみり)。

さて、今回のお題は今までいろいろと透明な物を撮るテクニックについて解説してきました。

(参考:過去のお題)

ライティングの写り込み考察

透明な物を白バック飛ばしで撮る。

それで今回は透明な物を白バック飛ばしで撮りつつ、輪郭を残すというちょっとトリッキーな撮り方です。それでときどきこうした絵柄付きのグラスがあると思いますが、こうしたグラスの絵柄を残したいし、背景を白く飛ばしたい、そんなことがあると思います(※撮影意図や撮る人の好みによるところではありますが・・・)。

ただ、こうした透明なものを白バック飛ばしで撮るとたいていこうなります。

これはかなり極端に撮っていますがグラスの輪郭が飛んでいます。グラス底部は残っていますが本体部分は白く飛んでしまっています。

さて、これをどうするか?

一つのやり方として、グラスの周辺を囲ってやれば良いのです。要するに飛んでいる部分に光が回らないようにするのです。ようするにこういうことです。

撮影光景としてはこんな感じ。

実際に撮るときは両サイドのボードの位置は何回か試し撮りしてほどよい位置を見つけます。ちなみに私の経験ではこの位置が一発で決まるってことはなかなか無いと思います。

それでこのセッティングで撮影するとこうなります。

これだとグラスの上部が白飛びしてしまって輪郭が残らず不格好です。なのでこの場合はさらにグラス上部も両サイドのボードと同様に光が回らないようにします。

要するにこういうことです。

それでこのセッティングで撮るとこういう感じで撮れます。

あとはこれを必要な部分だけトリミングしてPhotoshopでモニョモニョ加工すれば、こういう写真になるわけです。

ちなみにこの写真の写り込みはPhotoshopで足してます。

けっこう手間がかかると言えばかかりますが、作業の段取りを押さえる、道具を揃えておけばご家庭でもできる思いますし、この方法「だけ」という訳ではなく他にもやり方は無数にあると思います。

(まとめ)

・透明な物を白バック飛ばしで撮るときは、どの部分を残したいかを決めてからセッティングを考える。

・意外と単純と言うか、ちょっとした工夫で誰でも撮れます。

・一点注意すべきは被写体の材質や品質によって光が歪曲して綺麗に光が回らない(撮れない)場合があるという点。特にグラスは品質の差が出やすいように思います。

・今回紹介した方法「だけ」ではなく、他にもやり方はたくさんあります。もっと厳密にやるならば、ボードを被写体の形に切り抜いてやる方法もあります。

こんなところでしょうか。

ではまた。。。

(蛇足)

ちなみに今回しようしたグラスはイラストレーターのゆりだいんの「熟女グラス」です。なんというか、シュールな作風が特徴的なイラストを描くイラストレーターです。

このグラスは三軒茶屋のヴィレッジヴァンガードで売ってます。他にもいろいろグッズがあるので彼女のホームページでいろいろ見ると面白いですよ。

ゆりだいん公式ページ:クマが一生なおらない

(クマが治らないのは単なる不摂生だと思うがな・・・。)