ストロボ撮影のための「シャッタースピード」
(F5.6、ISO100、1/8000)
「露出決定の基本「露出トライアングル」の回で「シャッタースピードで環境光をコントロールする」と書きました。
それで、一般的にシャッタースピードの役割は光をコントロールするというよりは「手ぶれ」のほうを気にしている人は多く、ストロボを使って撮影する際にはこの認識だけではあっさり壁にぶつかります。
なぜならシャッタースピードとストロボの閃光には同期速度に限界があるからです。
今回はそれらがどういうことかを説明します。
まずはこちら↓の今どきGIFアニメショーンから;
これは何をしているかというと、シャッタースピードだけを一段分ずつ遅くして撮影したサンプルです。シャッタースピードは1/8000から1/4まで12段変化させています(12枚の画像を使っているということです)。なお、すべてF5.6、ISO100です。
最初の1/8000ではストロボを発光させていますが写っていません。これはストロボの閃光よりもシャッタースピードの方が速いためです。
※補足
一眼レフデジカメの場合、フォーカルプレーンシャッターのため、ストロボの閃光速度よりも早い速度の場合、撮影画像に「黒い線」が入ります。これはフォーカルプレーンの構造上こうした問題が起きます。
(F5.6、ISO100、1/8000)
それで見るべきポイントはストロボ以外の空や周辺の環境光の部分で暗くなっています。絞りを変えていないので被写界深度は変わっていません。そして一段遅く(1/4000)すると;
(F5.6、ISO100、1/4000)
空が少し明るくなりました(一段分)。それでまだ、ストロボの光が入っていません。これはまだシャッタースピードのほうがストロボの閃光よりも早いということです。それでシャッタースピードがどれくらいだとストロボ光が見えてくるかと言いますと;
1/400くらいでやっとうっすらストロボ光が見えてきます。しかし当然、これでは使えません。さらに1/3段遅く(1/320)すると;
そして1/250では;
この場合、1/250くらいで微妙に切れていますが、これくらいであれば撮れる場合があります。
それでなぜこういうことが起こるかというと、ストロボの光というのは;
このイメージ図のようにいきなりピークパワーにならないためです。ストロボの発光速度は製品によりますが、1/20000くらいから始まり、1/250とか1/200あたりでピークを迎える製品が多いような気がします(※あくまで経験則ですが)。
端的に言うとシャッターを押したからといってその瞬間にストロボ光が最大になってはいない、ということです。なんというか、こうシャッター押してブゥワーッっと光ると言いますか・・・。
なのでストロボの閃光よりも速いシャッタースピードでは同期しないということです(※この問題を回避する方法としてハイスピードシンクロがあります)。
それでストロボ使用時の実用的なシャッタースピードの最速は概ね1/200とされています。
「されている」と書いたのはまれに環境光下(日中シンクロなど)で1/250でも「同期しているように見える場合」もあったり、使っているストロボで多少なり違うためです。この辺は使っている機材や撮影環境によるので、「目安程度」で理解していればいいです。
さて、そこでこれまでのサンプル写真の「空の部分」を見ると分かるのですがシャッタースピードで環境光が変わっているのが分かると思います。これが「シャッタースピードで環境光をコントロールする」ということです。
さて、そこで一つ疑問が生まれます。上級者なら;
「だったら絞りでも変えられるだろ?」
とツッコミがあると思います。そしてそれもまた「正解」です。
ただ、絞りで環境光をコントロールしてしまうと「被写界深度」に影響します。実際に撮影する際には絞りで環境光をコントロールするケースもありますが、ただ、狙った被写界深度で撮るならばシャッタースピードとストロボの光量でコントロールしないとなりません。
また、シャッタースピードでコントロールしきれない場合も当然あるのでそういうときはNDフィルター(減光フィルター)を使います。NDフィルターとはカメラの「サングラス」で環境光が明るすぎる場合に数段分露出を落とす場合に使います。これはストロボで撮影するときも使いますし、露光時間を数段分延ばしたいときにも使います。
(これ↑がNDフィルター。いろいろな種類が売られています。)
特に屋外でストロボ撮影するときにシャッタースピードでコントロールできる露出の範囲は1/250くらいの速さまでなのでシャッタースピードで環境光をコントロールするのには限界があり、そういう場合NDフィルターを使って被写界深度を変えず減光します。また、シャッタースピードを気にせずストロボ撮影するならば前述した「ハイスピードシンクロ」に対応したストロボを使います。
(まとめ)
・シャッタースピードは「手ぶれ」だけではない。
・環境光をコントロールするならまずシャッタースピードから考える。ただ、完全にコントロールできるわけではない。
・絞りでも環境光のコントロールは可能、でも、被写界深度に影響する。
・撮影イメージを固め、シャッタースピードと絞りのバランスを考える。
今回のお題は正直なところ文章では伝えづらいというか、私もいろいろと考えてはみたものの、どうなんでしょう。「露出トライアングル」の理解が深まるプロセスでさらに理解が深まるのですが慣れるまでちょっと困惑するかも知れません。
ひとまずこんなところで。
facebook comments: