Category Archives: 写真撮影の基礎

ヒントは目の中に ~キャッチライトの話~ (後編)

さて、前回はキャッチライトの話の「前編」でした。それで今回は「後編」です。

それで後編で何をするかと言いますと、実際の写真でライティングをどのように推理するか?(※私の場合なのですべてのカメラマンがそうだということではありません)を解説します。

早速ですがお題となる写真はこちらです。

なぜこれをお題にしたかというと、単に「手元にあった」ので(笑)特にこのフリーペーパーと何ら関係ありませんよ。ちなみにしわしわなのは取り急ぎバッグに押し込んだらシワになり、スキャナもさほど精度高くないだけですので本誌の質とは関係ありません(念のため)。

さて、こうしてみるとよくある雑誌の表紙です。それでこの女優さんの目を見るとキャッチライトが見えますよね?

やはりこうしてみるとキャッチライトがあるとすごくすてきな雰囲気になります。特に女性の場合はキャッチライトでガラッと印象変わります。それでその目の中には丸いアンブレラらしきものが見えます。サイズは72インチくらいでしょうか。さらにアップで見ると;

ライティングはおそらくアンブレラだとは思うのですが、光源のサイズとしてはかなり大きいと思います。なので「フロント紗幕」の可能性も否定できません。また、中央に黒い人影らしきものが写っていますがこれは「カメラマン」です。また、カメラマンの左側にしゃがんでいる人影らしきものが見えてますが、これはアシスタントさんでしょうか。

なおこのライティングはカメラマンの真後ろから当てています。大きな光源の場合、こうした撮り方をしても被写体にカメラマンの影が被ることはありません(詳細についてはワークショップでは話していますがここでは割愛)。

さて、ダイアグラムを予想してみます(たぶんこうなんじゃないかなぁ、という私の推理ですよ);

念のため書きますが「これが正解」ということではなく、キャッチライトだけでこれだけのことが「推理可能」ということです。こういうことを日々やっておく、書店に行って気になったライティングはこうして頭の中にインプットしておきます。数が集まると今流行のライティングのトレンドや、その雑誌がどういう撮り方を好むのかなども分析できるようになります。

こうしてライティングの引き出しを増やす、というわけです。

(まとめ)

・キャッチライトから得られる情報は多い。

・今すぐ本屋さんで見ておいで♪楽しくてワクワクしますw

ちなみに渋谷界隈の書店の女性誌コーナーで「表紙だけガン見しているハゲたオッサン」がいたら私の可能性が高いですw(※声をかけて人違いでも私は知りません)

今回はこんなところで。

●第7回ワークショップのご案内

次回は8月24日(土)の開催です。(まだ募集中です)

※当事務所規定の人数が集まらない場合中止の可能性があります。

※年内は毎月開催予定ですが、年明け以降のスケジュールは未定です。

 




ヒントは目の中に ~キャッチライトの話~ (前編)

今回は「キャッチライト」の話です。

「キャッチライトって何?」と思われた方に説明しますと、撮影のときのライティングが目に写り込んだものを「キャッチライト」と言います。例えばこういう感じ。

瞳の中にソフトボックスが写り込んでいると思います。こういうことです。このキャッチライトがどう写り込んでいるかでモデルさんの印象はもちろん、写真全体の印象にも影響します。

それでこの写真↑はソフトボックスですが、ライティング機材以外にも「目の中の写り込み」にはいろんなものが写っています。カメラマンや周囲の人が写り込んでいることもあるし、どういうライティング機材を使っているかなども分かります。

なので雑誌などで気に入ったライティングがあったらとにかくモデルさんの「目の中」をじーーーっくり見ることです。

そこで今回はどの機材を使うとどういう写り込みをするか紹介します。

ちなみに当ブログは超低予算ですので、モデルさんを使えるわけもなく「サングラス」で目の代用してますからね。

●33インチホワイトアンブレラ


33インチなので小さめですが、立派に写り込んでいます。

●60インチホワイトアンブレラ


キャッチライトを作るポイントは、大きな光源は大きく写り込む、ということです。

そして次;

●33インチシルバーアンブレラ


これはシルバーアンブレラですがホワイトアンブレラとは違って硬い光質です。また、シルバー面がキャッチライトにも写り込んでいます。

●60インチシルバーアンブレラ


おそらくこの60インチかそれ以上のサイズのこうした「シルバーアンブレラの写り込み」はファッション系雑誌の表紙で頻繁に見かけます。「あ!」と思った方もいるのでは?と思います。

●ソフトボックス(長方形)


長方形のソフトボックスです。これは一番最初のサンプルに似ています。ちなみにこれは「縦」に使っていますがブームアームを使って「真上」や「上下(この場合二つ)」から当てて使うこともあります。これについてはキャッチライトの理屈が分かっていれば初見でも「ああ!」とすぐ分かります。

●ソフトボックス(オクタゴン)


丸いキャッチライトが特徴です。それで長方形とオクタゴンでは何が違うか?と聞かれるんですが、「キャッチライトが違う」のです。日本では人気がないと言いますか、馴染みが無いのですが、欧米ではポートレート撮影で使うならオクタゴンがポピュラーです。特に「一灯」しか使わないときなどソフトな光を照射しつつ、キャッチライトも丸く綺麗です。移動が多いウェディング撮影なんかでも使われているのを見かけます。

それで最後になりますが、最近頻繁に見かけるようになったビューティーディッシュ(いわゆるオパライト)です。


これはファッション系ではかなり人気のあるライティングです。コントラストの効いた光質が特徴で、キャッチライトもまん丸に写り込みます。特に欧米系のファッション誌では頻繁に使われているライティングです。これでビシッと決まると本当に印象的に撮れます。

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さて、今回はサングラスで代用していますが、人間の目では写り方が変わります(当たり前ですが人の目は「球体」なので)。ただ、今回紹介したそれぞれの機材の写り込みの特徴や形を覚えておけば、他の写真を見たときにどういうライティングでどういう角度で当てているかが容易に推理できるようになります。

(まとめ)

・キャッチライトもライティングの重要な要素の一つ。

・ライティング機材によって写り込むキャッチライトの形や大きさが違う。それによって写真の印象も変わる。

・キャッチライトの大きさは、光源の大きさに依存する。

こんなところでしょうか。

次回は「後編」ということで「どのように推理するか」をご紹介しますが、そんなの待つくらいなら書店に行って雑誌の表紙のモデルさんたちの「目の中」をじっくり見てみてください。ここで書いていることがすごーーーくよく分かりますから。

※すっかり忘れてましたがワークショップの募集まだしてますので合わせてよろしくお願いします。

※今回はギリギリになって「まだ空いてますか」ってのは勘弁してください<(_ _)>私の手違いで開催日に別件と被ってしまい、「!!!」と慌てたのですが、ワークショップのほうが先にスケジュール決めていたものの、今回は募集人数に達しなさそうなら早々に中止決定するかも知れません。




「適正露出」なんて無い。~アンケート結果~

先日の「『適正露出』なんて無い。」の中で実施しましたアンケートの話です。

ご回答頂きました皆さんありがとうございました。

当サイトの読者数に対して集まった母数が少ないのですが結果としては;

A:中央部重点測光で自動的に決められた露出

9.4%

B:Aの露出を露出補正で+1段。

53.1%

C:Bの露出を露出補正で+1段(Aの露出の+2段)。

37.5%

と言った結果でした。

ここから見えてくるのはやはり結果は「バラバラ」ということです。また、頂いたコメントをご紹介すると;

「被写体がちょっと気持ち悪いですー」

と言う人もいれば;

「美味しそうです」

と言う人もいました。この両者のコメントは特徴的です。要するに見る人によって写真の印象なんて変わると言うことでもあります。今回、私のミスで聞き忘れましたが性別や年齢も質問に加えるともう少し面白いことが見えたとも思います。

露出に限らず、アングルや被写界深度にはその時代のトレンドがあるのも事実です。この辺は料理写真を撮っているカメラマンなら経験的に感じている方は多いと思うのですが、洋服や音楽に流行があるように、写真にも流行はあります。

あと、BとCの「中間」というコメントもあり、もしかすると「BとCの中間くらい」が着地点なのかも知れませんが、今回のアンケートはあくまで「実験」なのでシビアな差ではなくザックリとした「差」にしてます。むしろあの三枚の写真をさらに1/3段ずつずらすという方法もありますが、さすがにそれはメンドイw

最後に;

入射光式露出計で測光すると適正はBとCの間くらいでは?

というコメントを頂いたのですが、入射光式で測定(いわゆる単体露出計で測定)しても、そもそものイメージ全体のトーンが決まっていないと入射光式だろうが反射光式だろうが関係ないです。

単体露出計というのはあくまで「測定器」です。

簡単に説明すると、絞りやシャッタースピード、ISO感度の3つ(露出トライアングル)のいずれかを任意に決めた後に測定するのが単体露出計です。主にカメラに内蔵されている反射光式の露出計測方法とはそもそもが違います。

今、反射式の単体露出計を使うことってほとんど無いと思うので、皆さんご存じの「カメラ内蔵の場合」と限定すると、あれってカメラが測定し、その結果を「自動的にカメラが設定を変えている」だけです。また、カメラ内蔵の反射式測光方法にも、評価測光、部分測光、スポット測光、中央部重点平均測光とあります(※キャノン5DmarkⅡの場合。皆さんは使っているカメラのマニュアルを見てみてください)。

それでこうして4種類も測光方式があるということは、そもそも自動的に正しい露出を提示する測光方式なんぞ無い、ということのように思います。

さて、それで任意に決めた後」と前述しましたが、ポイントは;

・ストロボ光の場合:シャッタースピードとISO感度

・自然光(定常光)の場合:絞り(もしくはシャッタースピード)とISO感度

を決定したあとに「測定」し、光が多い、足りないを判断します。光が足りなければ増やす、多ければ減らす、そのために「測定」するわけです。この光を増やす、減らすという概念については「フラッシュエクスポージャー」で解説した考え方が必要になります。

一方、反射式(この場合はカメラ内蔵を意味しています)の場合は、カメラの各種モードで撮影するわけですがカメラが勝手に「適正と思われる露出を計算し、カメラの設定を自動的にしてくれる」だけです。

また、wikipediaで「適正露出」を調べると

撮影された写真が人間から見て自然な明るさ・色彩で表現される露出を適正露出という。

と、書いてあることからも分かるように、「抽象的、且つ曖昧」です。また、「色彩」の感じ方は人種や住んでいる地域によって違います。南国が「原色系」で北欧が「淡色系(パステルカラーと言われている色彩)」からも分かるかな?と思います。

いずれにせよ一度「露出トライアングル」と「フラッシュエクスポージャー」を復習しておいてください。

なんつうか、おそらくこの辺を難しいと思ってしまうのはすべてが「点」だからだと思うんですよね。でもね、よーく考えて貰うとこうした概念をまとめたものが「撮影のときのカメラの設定」なんです。要するにすべて「繋がっている(「点」じゃなく「線」ね)」のです。この「繋がっている感じ」さえイメージできれば正直「楽勝」です。そうすると自然と単体露出計なんぞは単なる「計測器」ということが分かりますからね。

(まとめ)

あんまり難しく考えないこと。

です。

いずれにせよ露出に正解なんて無い、ということは今回のアンケート(というか実験)で分かったかと思います。

(おまけ)

かなり本質的なことを書いたつもりなんですが、完全にテキスト(活字)なのでおそらくちゃんと読んでくれる人はいないんじゃねーかな?と思います(T_T)

 

 

 




「適正露出」なんて無い。

今回は「適正露出」の話です。

それでなぜ、こんな話をするかと言いますと、「露出計の説明をして欲しい」という要望が少なからずあります。要するに「露出計で計測した露出が『適正露出』だから『正解』なんでしょ?」ということだと思うのですが、これは間違いです

たびたび書いておりますが、「撮影意図」が最優先であって「露出」というのは後回しです

※念のために書きますが、「露出計」を使うことが「正解」ではありませんからね。露出計はあくまで「計測器」であって「正解を示してくれる機械」ではありません。電卓と同じで使い方を間違ったり、そもそも計算が間違っていたら全く意味がありません。ここを誤解している人たちが本当に多いです。

また、「適正露出」という言葉の使い方がおかしいと言いますか、何というか・・・・。英語では「Perfect Exposure」と言ったりしますが、ニュアンスとしては「そうそうこれこれ!」みたいな使われ方だと思います。

要するに「適正露出」にも「Perfect Exposure」にもこれと言って客観的な指標があるわけではない、ということです。

さて、ここで「おいおい、何を言っているんだお前は!」という方に質問です。

次の三つの写真で「適正露出」はどれですか?

●A:F4.0、1/125、ISO200

●B:F4.0、1/60、ISO200

●C:F4.0、1/30、ISO200

さて、どうでしょうか?どれが「適正露出」ですか?

それぞれの露出を解説すると;

●A:中央部重点測光で自動的に決められた露出(←おそらく「正解」を欲しがる人たちの一般的な「適正露出」と思っている露出)。

●B:Aの露出を露出補正で+1段。

●C:Bの露出を露出補正で+1段(Aの露出の+2段)。

です。

おそらくあなたが選んだのは「適正露出」ではなく「好きな露出(というか「写真」)」だと思います。

違いますか?ね?

なので「適正露出」というよりは、「どれが一番好きですか?」が正しい聞き方で、「適正露出」という言葉の意味とは違います。複数の人にこの三種類の写真を見せ、投票してもらうとバラバラの結果になると思います(※ワークショップで実験済み)。ある程度偏る結果になると思いますが、「全員一致」はしません。

これが「適正露出なんて無い」と言っている理由です。

そうは言いつつさらに、皆さんからの回答を集計してみたいと思います。

Q.「適正露出はどれですか?」(←クリックするとアンケート画面に移動します)

(※統計的に信頼足る母数が集まれば後日紹介しますので是非ご協力お願いします♪&自由にコメントを書ける欄もご用意しましたw)

要するに(何度も書いていますが)自分がどういう撮影イメージで撮るかの方がはるかに重要です。

それで測光方式にもよりますが、あくまで「目安」であって欲しい撮影イメージとは違うことが多々あるということです。

(まとめ)

・「適正露出」は幻想であり、露出に「正解」はない。

・正解があるとすればそれは「撮影意図」に依存する。

・その写真を使う人が納得する露出が正しい露出。プロならば「お客が納得」すれば良いのです

また、ときおり知ったかぶりの人が「ハイキーだからダメ」とか「ローキーだからダメ」などとほざくアホ人がいますが、ハイキーがダメ、ローキーがダメ、なーんてことは一切ありません。そもそも写真に「ダメ」なんて無いんです。同様にヒストグラムを見て善し悪し判断するアホ人もいますがこれなんて愚の骨頂です。

そこにあるのは「好きか嫌いか」、「アリかナシか」だけです。

極端な話が写真の善し悪しなんてものは、その人の好みです。

こうした話を前提にいずれ「露出計」の解説をする予定です。

(※口頭だと5分で説明できるんだけど、文章で説明するのほんと難しいんですよ・・・、しょせん「計測器」なのに・・・(T_T))




ワークショップのテキスト




図解!「太陽」は大きな光源?小さな光源?

光源にはいろいろな種類があります。太陽の光は「自然光」だし、自然光を人工的に作ったのがストロボやHMIだったりします。蛍光灯やLEDは常時点灯している「定常光」です。

それでそもそも人類は「太陽」のおかげで存在しているわけですが、太陽って大きな光源か小さな光源か考えたことありますか?

答えは「小さな光源」です。

「?」となった方も少なからずおられると思いますが、太陽の光源というのは;

光量は大きいが小さな光源である。

ということです。すでに当ブログを熟読している方はお察し頂いたかと思いますがこういうことです。

いわゆる「直射日光」とか言われていますが、影がクッキリしているのは「小さな光源」だからです。光源の大小を考えるときは「影の付き方」を考えるのと同じです。

さて、太陽(直射日光)が小さな光源というのは分かりました。次に「雲」のお話しをしますが、これまたすでにお察し頂いた方も多いと思いますが雲は太陽のディフューザーです。すなわち大きな光源ということになります。

すなわち雲は世界で一番大きなディフューザーということが言えます。

さて、この辺はみなさん感覚的に知っているかと思うのですが、こうして改めて考えると大きな光源、小さな光源というのは単純な分だけ奥が深いのです。

(まとめ)

・大きな光源、小さな光源は大きな光量、小さな光量とは違う。

・しかし、大きな光源には大きな光量が必要である。

・大きな光源、小さな光源は「照射面積」で決まる。

もうこれに関しては散々言い続けていてウンザリな感じもしますが、ライティングを考える上でここを完全に理解していないとイメージ通りのライティングはできません。

※参考

大きな光源、小さな光源

続・大きな光源、小さな光源

上記も読むと原理原則の重要性が分かると思います。

ひとまず。

今回はなかなか希望者が少なく、まだ空きがありますのでこの機会に是非。

ただ、人数が少なければ少ないほど内容が濃くなりますのですでにお申し込み頂いた方たちはラッキーなのでお楽しみに♪もう原理原則を徹底的且つスパルタな感じで解説します。




盲点?露出と光質 ~後編~




これでバッチリ!「被写界深度」 ~後編~