Category Archives: ストロボ

狭い場所での料理撮影 ~後編~

さて、前編では撮影機材を使った例を紹介しました。

今回はバウンスを活用した例をご紹介します(P-82、P-132参照)。

狭い場所で撮影するときに、撮影機材が設置できない、もしくは大きな光源(P-66)を使いたいと言ったときに「壁」を使います。今回撮影したスペースで大きなアンブレラやソフトボックスを設置するスペースはありません。そういうときは壁を使って光源を作ります。

●天井バウンス

まずは天井バウンスから。

写真では分かりづらいですがこちらのお店の照明は暗めです。飲食店(特にお酒出すようなお店)の場合暗いことが多いです。そりゃ写真撮るためにお店をデザインしませんので当たり前です。でも、そうした環境でも撮らないとならないわけで、しかも狭いとなると使えそうな物はなんでも使います。光源のサイズも重要ですが、とにかく明るさを確保しないとなりません。

そこでこうした天井バウンスだと大きな光源を作り易いです。それでは早速撮ってみます。

光の周り方としてはむら無く回ってます。また真上からのバウンス光なので影も真下に出ています。でも、環境光の影響で少し赤くなっています。実際のところ店内照明が暖色系なので実際の見た目に近いです(※カメラのホワイトバランスは「オート」)。

さて、どうしたものか?これでも良いという判断もあれば、料理そのものの色味を出したいという判断もあります。ただ、もうすでにご承知かと思いますが、LightroomやPhotoshopで色温度を変えるだけです。多少の色温度の違いは後で修正可能なのであれば光の周り方や影付きに集中するという撮影スタイルもありです。実際にはテザー撮影(P-140)の場合は都度パソコンで確認できるので、不安なときはその場で色温度変えて確認します。

(左が修正前、右が修正後です。)

 これまた面倒な話ですが、右の修正したものは少し寒々しい印象(個人的見解)し、これが良いという判断もあります。「前編」でも書きましたがこのあたりは写真を使う人の好みだし、何をどう表現したいかに依存する部分だなぁ、と思います。毎回撮るたびに悩ましいところです。

●壁バウンス

さて、次に「壁バウンス」です。壁バウンスするには天井が高い場合なんかに使えると思います。天井バウンス同様大きな光源を作る目的もあります。

ストロボの手前に置いてあるレフ板について説明すると、壁バウンスの場合は天井バウンスと異なり、反射してくる光の逆側の光量が落ち、影が出るのでそれを補う目的で置きました。

また、このセッティングの場合、ストロボ光の影響も受ける(ストロボ直に近い光質になる)のでレフ板を置くことで影付きを弱める目的もあります。

さて、とりあえずセッティングが決まればあとは撮ります。

今回は壁とストロボの距離が離れていたので光量を1/2(GN60)にしています。F値も4.0に変えて手前より奥側を少しぼかしています。また、大きな光源なので料理の左右や俯瞰などいろいろなアングルで撮ります。

さて、ここでいろいろな料理を撮ってきました。すると食べられることもなく料理が「待機」してまして、こうした大きな光源で撮っているときは最後に集合写真を撮ります。

こうしてみるとそれっぽいアングルですが実際の撮影テーブルはこんな感じです。

狭いながらも料理の位置や自分の撮る位置を変えながら撮ります。与えられた環境の中でベストを尽くすことだけを心がけます。

余談ですが、パエリアは乾き、アヒージョは油が固まり始めてくるのでスピード重視ですw

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さて、二回にわたり久しぶりの更新でした。いずれも拙著の内容です。お持ちの方はいまいちど読み返し、練習してみてください。




狭い場所での料理撮影 ~前編~

今年の2月に拙著が販売され、なかなかご好評頂いております<(_ _)>

それで今回は拙著の内容の延長で「狭い場所での料理撮影」について解説してみようと思います(P-138参照)。

まず、実際の撮影現場というのは撮影条件がこちらの都合にマッチするということなんてあるわけもなく、常に何かしら制限があるものでそんなのいちいち気にしてても仕方ないのでその環境でできることをやるしかないわけです。特に狭い場所の場合は機材の選定も考える必要があるのですが、今回の撮影スペースは飲食店の一角で、広さにして畳み2畳くらいのスペースでした。

ライトスタンドを立てるスペースも限られてますし、そもそもテーブルが小さいという制限があります。それで今回は33インチのボックスアンブレラを使います。

それで33インチを選んだのはむろんスペースの制約があるからで、ソフトボックスを使うスペースもなく、43インチくらいのサイズだと撮影時のワーキングスペースの確保が難しいという判断です。実のところ43インチサイズは使い勝手が良いというか、割と万能なのですがやはり物理的に大きく、今回は撮影に使うテーブルのサイズも小さいということもあり小さいサイズを選びました。

露出の設定についてはストロボ1/4(GN60)、F8.0、ISO200、シャッタースピード1/125でチェックします。アンブレラも実際にテストしてみると今回使うテーブルをカバーするくらいの光は回ります。

実際の撮影風景はこんな感じ。

それでボックスタイプのアンブレラを使った理由ですが、普通のアンブレラでも大丈夫だと思いつつ、ディフューザー無しのアンブレラで撮影した場合、光がまだらになったり、シャフトが写り込む可能性があるからです(あくまで個人の経験則なのでそこは好みです)。特に料理の場合は汁気や油分があるのでてかり易いのでね。

ライティングが決まればあとはひたすら撮るだけです。斜めからでも俯瞰でも撮りながら微調整をします。

それでディフューザー付きのアンブレラということで言うと普通のアンブレラにディフューザーを付けて使う場合もあります。

使っているディフューザーは41インチサイズですが、今回は36インチの折り畳みタイプのアンブレラに付けて使いました。

アンブレラがディフューザーより小さいので多少ぶかぶかな感じでしたがとりあえず付いたので使います。機材の使い方というか使い分けは臨機応変に。

それで撮ってみると被写体のてかりが気になり、ストロボ光を一段落としました(この辺は各自の判断です)。

ちなみに料理撮影の場合、次々に料理が出てくることが多いのでかなりテンポやスピードが必要になります。また、せっかくなので複数の料理を並べて撮ったりもします。

最初の作例よりもストロボ光を一段落としてますので露出が変わってますが、露出に関しては後から補正することも想定してどんどん撮影していきます。拙著のP-57でも書きましたが、露出(明るさ)に関して言うと人によりけりだったりします。例えば;

この3つの露出の違いの中でどれが良いかなんて各自の好みです。端的に言うならば実際にこの「写真を使う人」の好みが「正解」です。


それで撮っていてどうしてもてかりが気になる時は向きを変えたり入射角と反射角の原理(P-62)を考えながら撮ります。

このあたりに正解があるわけでは無いのでいつも悩ましいところではありますが、、、

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さて、久しぶりの更新だったのでいささかぎこちない感が否めませんが、「後編」ではバウンスを使った例をご紹介します。




コラム:クリップオンストロボの発熱量考察(ゆるめの検証)

先日、ワークショップの卒業生の方から「クリップオンストロボから煙が出るんです・・・。」という質問を頂きました。私自身はそんな経験ないのですが、気になって他のカメラマンに聞いてみると焦げ臭いとか、煙出るとか割と起こってるようです。

そこで、どれくらいの発熱なのか一度検証してみようということで調べてみました(※当事務所は検査機関でもなんでもないので精度とか、計測方法なんて雑ですからね)。

まず、計測の仕方としてはソフトボックスの中でソフトボックス内部の温度変化、バッテリーケース部分、ストロボのヘッド(発光面)の三カ所をストロボをフルパワーで連続発光してやりました。

念のためバッテリーパック使いました。

また、温度は非接触式の温度計(電池ケース、発光面用)を使い、ソフトボックス内部の温度は100円ショップの温度計を使用しました。

室温は14度と低く(スタジオは暖房入れても20度くらいまでしか上がりません(T_T))、ソフトボックス内部は16度でした。

ストロボはYONGNUO560(GN56)を使って、フルパワーにして発光。それで普段、滅多にフル発光しないのですが、概ね10回超えたあたりでエラーになり、発光できなくなりました。かなり間髪入れずに発光させているので相当無理がかかっているのでしょう。

そこで40回発光させたところで電池ケース部分の温度を測ると33度ほどでした。

さらに続けてこの単調な作業を続けることに・・・。

・60回:37度
・70回:40度
・90回:45度
・100回:48度
・120回:48度

恐らく電池ケースの部分は冬場だと、50度前後だと思われます。ただ、夏場だとこれ以上の温度になるだろうし、オーバーヒートのタイミングももっと早いはず。それで発光面に関して言えば、100回超えたあたりで測定したところ70度くらいになってました。

一方、ソフトボックス内部は20度くらいです。ソフトボックスを使ったことのある方なら知っていると思いますが、「ほんわりと暖かくなる」程度に内部の温度が上がります。

そもそもフルパワーでの発光って、手で発光面を押さえて発光してもそれなりの熱さを感じるので(※やるときは自己責任で♪やけどしても知りません。)、相応の発熱だと思います。それでそれを裏付けるかのように、検証に使ったストロボの発光面が溶けてましたw

けっこうな温度になるんですねぇ・・・・。最初に書いた「焦げ臭い」とか「煙が出る」というのはけっこう頻発しているのかも知れません。

左が通常、右が検証用に使ったストロボです。うっすら黄色くなっているのはどうやら「焦げ」らしい・・・。ちなみにこのストロボはこの検証後にいつも通り使いましたが使えました。

●まとめ

・フル発光で連写なんてまずやらないのでこの検証は参考程度。

・光量が必要な連続撮影するような場合は、ストロボの出力を1/2や1/4にし、ストロボの数を増やすほうがローリスク。

・GN56のクリップオンストロボのフルパワーはあくまで「余力」であって、1/4、もしくは1/2あたりを常用域とするのがスマート。

この検証を夏場にやるとまた違う結果というか、もっと面白いかも。

ご参考まで。

(ワークショップの告知)

どうも今回のワークショップはお申し込み者数が渋めです。

希望者が多いときは断るくらいに集まりますが、そうじゃないときはほんと来ないw

この現象はどこの何と何に相関関係があるのか、統計的に調べてみたい。今週中に当事務所の規定数に達しない場合は久しぶりに卒業生向けのイベント(これはこれで突然のことなので卒業生の皆さんにとっては迷惑かも知れないのだけど・・・)にしちゃおうかな?とも考えてます。

ご興味のある方はお早めに。




クイズ 白バック飛ばし

今月24(土)開催予定のワークショップは当事務所規定の申込者数に達しませんでしたの開催しないことにしました。でも、来月も開催の予定はしています(恐らく21日か28日あたり)。希望者がいようがいまいが一応毎月スケジュールに入れていきますので中止が続いても、タイミングが合わない方も全く気にしないでください。

ほんとそろそろ卒業生向けのイベント考えないとマズイ・・・。

(※卒業生の皆さんすみません!リクエストあればメールくださいね!単なる「飲み会」でもいいかしら??w)

それで今回はそんなワークショップの一コマでやっている「白バック飛ばし」の応用例をご紹介。

題して、「クイズ 白バック飛ばし」です。

そこでいきなり質問です。

Q1.白バック飛ばしは背景が白くないと撮れない?

す。

どうでしょうか?さらに立て続けに質問です。以下はいろいろな壁紙を想定したサンプルです。

Q2.この中で飛ばないのはどれでしょうか?

ちなみに横から見るとこうなってます。

ガッチリ色が付いていたり、凹凸のある壁もあります。恐らく皆さんの日常生活の中でよく見かけるタイプの壁だと思います。

さてどうでしょうか?

・。

Ans.全部飛ぶ

が正解です。

よく「壁が白くないと白バック飛ばしできないんじゃないですか?」と聞かれますが、ちょっとしたコツと言いますか、露出トライアングルとフラッシュエクスポージャーのバランスで多少色や凹凸のある壁でも白く飛ばせます。

また、壁に当てるときの角度なんかも重要になってきますが、実際のところ白く飛ぶ壁ってけっこうあります。

ここのところ「白バック飛ばし」がかなり一般的なライティングテクニックとして浸透しているように思い、個人的には面白く各種媒体を見ています。

(まとめ)

・白バック飛ばしは背景が白くなくてもできる状況は意外とある!

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それにしてもまだまだ面白いネタがあるんですが、予算の関係もありつつ、そしてここのところ本当にバタバタしてまして、割と体はヒマなんですが、頭の中がもうグチャグチャなんです。その結果手つかずの業務が多数発生しているという始末。

とりあえず今回はこの辺でご容赦いただきたい<(_ _)>




たかが一段、されど一段、照射角度の話 ~後編~

ここのところドタバタしてまして、いささか更新が滞っております(いつも通りですがw)。

さて、前回はクリップオンストロボの照射角度でどう違いがあるか考察しました。そこで今回は43インチのホワイトアンブレラを使ってテストしてみます。

前回同様、4カ所に印を付けていますが、今回は上下左右50cmで測定します。また、1.5mの距離で角度は45度くらいにしています。このセッティングの「45度」というのは意味があると言えばあるし、無いと言えば無いのですが、一応説明すると伝統的なライティングに「レンブラントライティング」という手法がありまして、概ねそれに準拠したセッティングです。

さて、それで露出計はシャッタースピード1/100、ISO感度100で設定しています。またストロボはGN58で出力は1/4です。

●105mm

●24mm

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さて、前回のストロボ直の場合と逆に、アンブレラを使うと24mmのほうが1/3程度明るいです。これは照射面積に依るところですが、まぁ、それでも違いは1/3段程度です。ただ、私の個人的な経験則ですが、アンブレラやソフトボックスを使う場合、24mmのほうが光の反射効率良いように思います(※私がいつもバカの一つ覚えで24mmにしている理由はこういうことです)。

(まとめ)

・クリップオンストロボの照射角度に関しては好みです♪

非常にいい加減なまとめですが、照射角度、特にオフカメラ、ましてやアンブレラやソフトボックスを使うときはさほどナーバスにならなくても良いように思います。

(余談)

ちなみにですが、スタジオ用ストロボ(モノブロックやジェネレータータイプのストロボ)の場合、「リフレクター」という機材を使って照射角度を変えます。ただ、こちらもさほどナーバスに使い分けているというよりは、買ったら付いてきたリフレクターを何も考えず使う場合のほうが多いんじゃないでしょうかね。




たかが一段、されど一段、照射角度の話 ~前編~

今回はクリップオンストロボの「照射角度」のお話です。

これは何かというとクリップオンストロボの上位機種って照射角度が24mm(約84度)から105mm(約23度)の間で変えることができます。これはマニュアルでも、ズーム連動でも変えられる機種が多いと思います。それでこの「照射角度はどれが良いんですか?」と聞かれます。それで私はいつも24mmなので「24mmで良いんじゃないの??」と答えていますが皆さんどうも納得しかねるようですので、実際にどのように変わるか見てみましょう。

●4mの距離から壁に当ててみる。

それで壁に印を付け4mの距離から中央から上下50cm、左右1mの位置で24mmと105mmの2パターンを露出計で測定しました。露出計はシャッタースピード1/100、ISO感度100で設定しています。またストロボはGN58で出力は1/4です。

●105mm

少し光が下に向いてしまってますが、ザックリとこんな感じです。

(※露出計の解説してませんがこの場合、数値が大きい場所ほど明るいということです)

●24mm

105mmに比べて全体に光が当たっている一方、集光という点では105mmよりは弱いです。実際に測定した数値を見ると概ね一段分くらい弱いというのが分かると思います。

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とりあえず、24mmと105mmでは約一段分くらい違うというのが分かったと思います。そこで問題になるのはこの「一段分の差」を「たかが一段」なのか「されど一段」なのか、ということになるかと思います。

一口に「一段分」と言ってもISO100とISO200ならさほど違いが無いようにも思いますがISO1600とISO3200だと、いささか胸にグッと来ると言いますか、撮影するときに覚悟が必要なISO感度のようにも思いますし、絞りで言うとF8とF11はさほど変わらなさそうですが、F2.8とF4.0は被写界深度に影響しそうにも感じます。

なので、この「一段分」をどう捉えるか、がポイントになるかと思います。

(まとめ)

・ストロボを直接被写体に当てる場合、24mmと105mmでは露出にして一段分くらい違う。

・あとは好みというか使い分けの問題。

逆にストロボの照射角度で露出を一段分くらい上げたり、下げたりすることも可能ということでもあるわけです。

今回はストロボ直接当てた場合の比較でしたが、次回はアンブレラを使うとどうなるかを説明します。

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29日開催予定のワークショップですが、当事務所規定の募集人数に達しませんでしたので開催しません。なお、一応、来月も予定していますが、まだスケジュールが確定していないので未定です。決まり次第告知しますのでその際にはよろしくお願いします<(_ _)>




夏前にマスターしたい「ハイスピードシンクロ」 ~後編~

さて、前回はハイスピードシンクロについての定義や用語の整理をしました。

そこで今回は実際に何がどう変わるのかの説明をします。ただ、今回の説明は「ハイスピードシンクロ」を使った解説ですが、「ハイスピードシンクロの機能を除けば」、いつも言っている4つのパラメーターの原理原則に沿っています。

参考:

ストロボ撮影のための「絞り」

ストロボ撮影のための「シャッタースピード」

たまにはドン!と上げてみよう「ISO感度」

ストロボ撮影のための「フラッシュエクスポージャー」

皆さんの中にいままでの解説が「点のまま」の方もいるかと思いますが、これを機に「線」にしてしまいましょう。

まずはスタート地点から;

●ストロボ発光無しの状態

まずここをスタート地点としていろいろシャッタースピードによる変化を見ていきます。そこで今回はメーカー純正のストロボとTTLケーブルを使いました。

 

さて、ストロボの光量は1/4、そしてハイスピードシンクロに設定します。

ではシャッタースピードを一段ずつ上げて発光させて見ます。

●F5.6 1/60 ISO200 

特別な感じはしないというか、「ああ、そうですか」みたいな感じでしょうか。

それで、ここで見るべきポイントは何かというと「窓の外」すなわち環境光の変化です。ハイスピードシンクロの機能は「被写界深度を変えずに環境光をコントロールする」ことですからね。

そして次;

●F5.6 1/125 ISO200 

●F5.6 1/250 ISO200

 本来であればこれくらいのシャッタースピードで黒い帯が入りますが入ってません。さらにもう一段シャッタースピードを上げます。

●F5.6 1/500 ISO200 

さて、窓の外が暗くなっているのが分かりますが、ついでにストロボの光量自体も減っているのが分かると思います。

シャッタースピードで環境光をコントロールする、というのが鉄則ですが、実際のところストロボの光量にも影響するということが分かるかと思います。そして続いてシャッタースピードだけ変化させ、どうなるか、ハイスピードシンクロの限界である1/8000まで順に見ていきます。

●F5.6 1/1000 ISO200 

●F5.6 1/2000 ISO200 

地味な感じが続きます・・・・w

●F5.6 1/4000 ISO200 

●F5.6 1/8000 ISO200 

ひとまずハイスピードシンクロの限界の1/8000まで試してみましたが、真っ暗です。

また、ここまで見て、すでにハイスピードシンクロの同期速度についてはどうでもよくなっている(?)気がしなくもないですが、要するに;

・シャッタースピードで環境光をコントロールする。

・シャッタースピードでストロボ光に影響がある。

ということです。それでなぜシャッタースピードで環境光をコントロールする(という定義になる)かというと、通常のストロボで同期するシャッター速度は限定的(1/160~1/200程度)だからであって、実際には絞り(ストロボ光をコントロール)で環境光をコントロールする場合もあります(※黒バック潰しは絞りで環境光をコントロールします)。というのもそれぞれが独立した機能ではなく、相互に影響し合って露出は決まるからです。

では、1/8000の真っ暗な写真のISO感度を6400(5段アップ)まで上げるとどうなるか?

●F5.6 1/8000 ISO6400

露出で言うと1/250の例と同じになります。

今回はハイスピードシンクロの解説でしたが、あくまで「クリップオンストロボの機能の話」であって、その原理は今までも書いてきた原理原則から逸脱するようなことは無いんです。

これでハイスピードシンクロ、日中シンクロの理屈はおわかり頂けたかと思います。

(まとめ)

・被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影するための機能がハイスピードシンクロ。

・「ハイスピードシンクロ」はあくまでクリップオンストロボの機能の話。スタジオ用ストロボには無い機能。

ちなみに「被写界深度を変えずに」というのは一定の焦点距離での話です。焦点距離を変えることで被写界深度が変えることができるのは過去に説明しています。

参考:

これでバッチリ!「被写界深度」 ~前編~

これでバッチリ!「被写界深度」 ~後編~

言ってしまうとハイスピードシンクロはトリッキーな機能とも言えるわけです。そうは言いつつ、これから夏に向けて覚えておくと面白い表現ができると思います。

ただ、一つ気をつけるのは真夏のカンカン照りの日にストロボ発光させて写真撮っていると変な人だと思われますがねw

ではまた。

(以下、余談)

・その1

今月開催予定のワークショップですがお申し込みがイマイチですw今月の開催は無理っぽいのでそろそろ来月の開催スケジュールを考えることにします。

・その2

ワークショップの参加者や、時折頂く質問で、みなさんがよくつまづいているポイントに「背景」の考えがスッポリ抜けているんですね。私は「背景露出」と呼んでいますが(※「背景露出」というのは私の造語なのでそんな専門用語ありません。)、背景と被写体の相関性を考えないとライティング知識をどんなに詰め込んでも知識が「線」になりづらいように思います。特に今回説明した日中シンクロは被写体と背景の露出差を考えないと上手く行かないんです。

これは特に難しいことではなく、4つのパラメーターを常に意識すること、そして、最終的に露出は「面で決まる」ということです。この辺については改めて説明しなきゃならんなー、と思っていますが、これが活字で説明するにはどうしたら良いか、悩みどころではあります。




夏前にマスターしたい「ハイスピードシンクロ」 ~前編~

さて、久しぶりですが今回は「ハイスピードシンクロ」のお話です。

この言葉を聞いたことがある方もいると思いますが、誤解されている方も多い部分ですので解説します。

よくある誤解としては「シャッタースピードを上げてストロボ発光して撮影する方法」という誤解です。これに関しては「ハイスピードシンクロ」という名称に問題があるとも言えます。

そこでなぜ「誤解」かと言いますと、普通のストロボでシャッタースピードを上げて撮るとどうなるか?こうなります;

シャッタースピードを1/320にしてかなり極端に撮ってますがこういう影が入ります。おそらく、前述した「シャッタースピード上げて撮る」という認識の方は実際に撮影してこうしたシャッターの影が入るのを目の当たりにして「???」となった経験をお持ちの方もいるかと思います。普通のストロボでこうした幕が写り込まないのは1/160~1/200程度じゃないかと思います(経験則)。ただ、この同期速度はストロボの機種で多少異なるようです。

それで、ひとまずハイスピードシンクロの定義とは何か、キャノンのウェブサイトで記載されていた説明を転用すると;

通常ストロボ撮影では、先幕が走り終わり、後幕が走り始める前にストロボが閃光発光します。ハイスピードシンクロは、先幕と後幕がスリットを形成して走る高速シャッタースピードでも、長時間ストロボを発光し続けることで同調させるものです。EOS専用スピードライトのEXシリーズストロボはこの発光方式も搭載。しかもE-TTLIIですからハイスピードシンクロ撮影もオートで可能としています。
(出所:Canon FlashWork

ということです。先幕、とか後幕という言葉を聞いたことがあるかと思いますが、これは「フォーカルプレーンシャッター(←wikipediaのページに移動します)」というシャッター方式の一つです。また、ハイスピードシンクロの説明で「FPシンクロ」という言葉が出てくることがありますが、これは「フォーカルプレーン(=FP)」の略です。すなわち;

ハイスピードシンクロ=FPシンクロ

ということです。それでこの原理を簡単に図(?)にするとこういうことです。

・通常のストロボ撮影 :(先幕)------(発光)(後幕) ←発光回数一回

・ハイスピードシンクロ :(先幕)(発光)(発光)(発光)(後幕) ←連続発光

ハイスピードシンクロさせるときはストロボが連続発光していることになります(通常は一回)。むろん、連続発光させるのでバッテリーの消耗が早いです。また、このハイスピードシンクロというのは「クリップオンストロボに搭載されている数ある機能の中の一つ」ということです。スタジオ用の大型ストロボやモノブロックストロボにはこのような機能はありません。

なぜ、スタジオ用ストロボにはこの機能が無いか?

無くても困らない機能だからです。(ストロボメーカーさんを敵に回したい訳ではありません<(_ _)>)

では、なぜ無くても困らないかと言いますと、これまた聞いたことがあると思いますが「日中シンクロ」というテクニックがあるからです。ただ、この日中シンクロという呼称も誤解を招きやすいと言いますか、「日中ライティング」とか「日中ストロボ」のほうがしっくりきそうに思います。

ようするに日中、屋外(環境光の強い撮影環境)で背景と被写体の露出を近づける(もしくは差を付ける)ためにストロボ発光するのですが、このテクニックの考え方はハイスピードシンクロと同じだからです。ちなみにですが、日中シンクロの例として;

●ストロボ無し

●ストロボ有り

この二つの写真の後者の「ストロボ有り」がいわゆる日中シンクロで撮影した写真ということになります(※ほんとはもっとわかりやすい写真を用意したかったのですが、手元にあって使えるのがこれだけでしたので雰囲気だけ掴んでください<(_ _)>)。

それではハイスピードシンクロという機能はなんのためにあるかと言いますと;

「被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影すること」(長っ!)

です。こうすることによって被写体と環境光の露出バランスを変化させることでドラマチックな写真が撮れるということです。ただし、「被写界深度を変えない」ということであれば、レンズに減光フィルターを付けて撮影しても同じ結果になります。なのでスタジオ用ストロボにはこの機能が無いのです。

まとめると;

「ハイスピードシンクロ=FPシンクロ≒日中シンクロ」

ということです。最後の日中シンクロは実現するストロボ側の機能としてほかの二つと違いますが、やろうとしているライティング技術の「原理は同じ」です。

また、今回タイトルに「夏前にマスターしたい」となぜ付けているかというと、日中シンクロって夏の日差しの強い時につかうと色味の締まった、かなりクールな表現ができるからなんです。このテクニックを使った広告写真はけっこうあります。だからこそ、この理屈を理解し、夏に備えておきたい、という訳です。

(まとめ)

ひとまず今回のポイントをまとめると。

・被写界深度を変えずに環境光をコントロールしてストロボ撮影すること。

・無くても困らない機能である。

・通常のシャッタースピードで同期できるのは1/160~1/200程度

ハイスピードシンクロに関して言えばこんな感じです。おそらく皆さんお持ちのメーカー純正の上位機種のクリップオンストロボにはハイスピードシンクロ機能があるわけで、せっかくクリップオンストロボを使うなら「使えるテクニック」として覚えておいて損はありません。(※クリップオンストロボを「スピードライト」というのはハイスピードシンクロできるからでもありますし。)

また、過去にシャッタースピードについての記事もありますのでそちらを再読しておくと次回の説明がわかりやすいと思います。

参考:ストロボ撮影のための「シャッタースピード」

それでなぜ数回にわけて説明するかというと、ハイスピードシンクロを軸に、絞り、シャッタースピード、ISO感度、フラッシュエクスポージャーの4つのパラメーターの組み合わせ、という原理原則を再度確認していただきたいからです。この原理原則から逸脱することはありえませんので。

ひとまず。

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蛇足ですが、今月のワークショップのお申し込みがありません(T_T)

来るときは断るほどなのに、来ないときは全く来ない、という奇妙な感じではありますw来月も一応予定はしていますが、次回はおそらくゴールデンウィーク直前くらいのタイミングになりそうです(※来月から消費税を外税にします)。

それではワークショップもよろしくお願いいたします<(_ _)>